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About Ayurveda

​ アーユルヴェーダとは約五千年前にインドで発祥した生命科学とされています。「アーユス」とは生命や寿命、「ヴェーダ」は真理や科学などを意味し、アーユルヴェーダは『幸福で有益な長寿のための智慧』と言われています。そして、この幸福は外部から何かを加えることによって到達するのではなく、すでに持っている物に気づき、それを整える事と考えます。これは幸せで健康に長生きするためには、自分自身の心と体と向き合うことが最も重要であり、(身体的、心理的)病気の兆候に自分自身で気づき、病気になる前にその原因を突き止め改善して病気を防ぐことによって、健康を維持して幸せになると言う考え方です。つまり、アーユルヴェーダとは、健康で幸せに長生きする不健康にならないための方法(智慧)をまとめたものです。

ドーシャとトリグナ

 アーユルヴェーダでは心の基礎となるエネルギーを「トリグナ心のドーシャ)、体の元となる生命エネルギーを「ドーシャ(体のドーシャ)」と呼び、個々の心と体の状態を分析します。そして健康に幸せになるための最善の方法を探し出し、メンテナンスを行います。そのためには、まず自分自身の体(生命)の性質と状態を知る必要があります。私たちの性質と状態は「ドーシャ」(体の元となる生命エネルギー)と呼ばれる3つの性質(ヴァータピッタカパ)に分類されます。では、どうやってこの性質が分類されるのでしょうか。アーユルヴェーダでは自然界の全てのものは「地」「水」「火」「風」「空」の5つの元素でできていて、それぞれの性質があると考えます。私たちの性質であるドーシャはこの5つの元素のバランスにより、ヴァータピッタカパの3種類に分類されます。さらに、このドーシャはそれぞれの体の中に存在し、そのバランスは常に変動するため、今の自分のドーシャは常に変わります。つまり、3つのドーシャの動きを良いバランスに保つことが、健康な体を維持することにつながると考えます。​​

​【5つの元素の性質】

土台を築く働きがあります。おだやかで安定性があり、変化しにくい性質があります。人体では骨格や筋肉があてはまります。増えすぎると頑固さが現れ、動きが鈍くなります。

​流動性をそなえた変化の力を持ちます。順応性が高く固執しない、しなやかさのある性質があります。人体では血液やリンパ液など体内を流れる液は水の影響を受けます。増えすぎると依存心が強くなります。

固体を液体へ、液体を気体へと変換するような変換の力を持ち、情熱的で積極的な性格をあらわす性質があります。人体では分泌や消化などの働きを司ります。バランスが崩れると嫉妬深くなります。

​動きを生み出す力があります。人体では呼吸を司り、血液を循環させたり、心臓を動かしたりします。増えすぎると行動力が増し好奇心も豊かになりますが、一つの物事に集中できない移り気な性質になります。

​スペースを象徴します。全てのエネルギーのバランスがとれており、空っぽの器のように無限の可能性があるというイメージです。増えるとさまざまな物を受け入れられる、ゆとりのある状態になります。

病気と健康の位置付け

 ドーシャが乱れると、人は心や体に不調が現れ、病気になります。アーユルヴェーダでは健康な状態と病気との間に明確な一線はありません。グラデーションのような状態であると考え、エネルギーのバランスの取れた健康な状態から、病気が進展し慢性化するまでの過程を7段階(①健康→②蓄積→③増悪→④播種→⑤局在化→⑥発症→⑦慢性化)に分類しています。現代医学で「病気」として捉えられるのは、6段階目の「発症」以降のことです

​西洋医学

健康

病気

​中医学

健康

未病

病気(已病)

アーユルヴェーダ

健康

蓄積

増悪

播種

局在化

発症

慢性化

健康の増進

病気の悪化

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アグニとオージャス

​ また、アーユルヴェーダにおける病気を理解する上で、特に重要なのが「アグニ」と「オージャス」です。「アグニ」とは「消化の火」「代謝の火」などと訳され、胃内の消化液などが持つエネルギーです。体内における「変換」の動きを担うものです。アグニが働く変換の過程では、活力素である「オージャス」、未消化物である「アーマ」、完全燃焼したあとの燃えかす「マラ」も発生します。エネルギーのアンバランスなどによってアグニが順調に働かなくなると、アーマが全身に蓄積され病気の引き金になります。「オージャス」は「活力素」と訳されるエネルギーで、ドーシャのバランスを維持させてダートゥ(組織)を助け、免疫力を高める働きを持っています。オージャスはダートゥの変換の過程で作り出されます。その力を高めるためには、食物の消化はもちろん、心の体験も消化できるような生活が大切です。オージャスが低下してもドーシャが乱れ、病気の引き金となります。

ドーシャを変動させる5つの要因

  健康を保つためには、アグニオージャスが順調に働き、アーマを蓄積させずにオージャスを充実させることが重要です。そのためには、ドーシャのバランスがとれていることが求められます。ドーシャのバランスに影響する要因は、①生まれ持った体質②時間と季節③日常生活の暮らし方④場所および土地⑤天体の運行、の5つに分類できます。ドーシャには「似た性質のもの同士が影響を与え合って増殖する」という性質があり、この5つの要因によってバランスを変化させていきます。

鎮静療法と浄化療法

​ 具体的なドーシャのバランスを整える方法には鎮静療法(シャマナ)浄化療法(ショーダナ)があります。アーユルヴェーダにも、現代医学と似たような診療科分類が8部門(治病医学6部門と予防医学2部門)あります。それと同時に、治療原則として挙げられるのは、生命の構成要素(意識・精神・五感・肉体)へのアプローチが生命そのものに影響を及ぼすということです。つまり、系統別に分類しているものの一つのアプローチは独立したものではなく、生命全体に波及すると考えます。

​ ドーシャが増大しはじめて病気へと発展するまでには、いくつもの段階があります。鎮静療法は、発病に至るまでの段階でも有効なアプローチであり、行うことによって健康の維持増進をはかることができます。この方法は予防医学的アプローチであり個人でも実践ができます。それに対して浄化療法は、病気が発症したあとの段階によって治療を促すもので、医療者に任せるパンチャカルマなどを指します。現代医学では発症後のアプローチに注力することに対し、アーユルヴェーダでは発症前から行う鎮静療法を重視するという点は、大きな違いです。

心の鎮静と浄化

 ドーシャのバランスを整えるためには、鎮静療法浄化療法とは別に、心の鎮静と浄化を行うためにはサットヴァを高める必要があります。その代表的な方法として、以下の4つが挙げられます。

  1. 沈黙や瞑想などにより「純粋な静寂」を体験する​

  2. 無判断により心の静寂を体験する(マインドフルネス)

  3. 休息をとって自然に触れる

  4. オージャスを増やす

​①​オージャスを増やす食物を摂る

②オージャスを増やす方法で食事をする

③ラサーヤナ(強壮長寿法)を行う​​

ストレスの解消法

 ストレスと心身の関係についてアーユルヴェーダ的な解釈では、肉体的ストレスは体のドーシャの乱れ、精神的ストレスは心のドーシャの乱れに相当します。しかし、だからといってストレスが全くない状態が理想的というわけではありません。適度なストレスはユーストレスと呼ばれ、ユーストレスがある時はドーシャのバランスは崩れません。消化力も充分に働いて、アーマが蓄積しない状態を保つことができます。食べ物が消化されて栄養になるように、ストレスを体験することで成長もできます。それに対し、害になるほどの過度なストレスはディストレスと呼ばれています。ディストレスは、ドーシャのバランスを崩し、アーマを蓄積させてしまいます。ディストレスがあるということは、ストレス解消能力以上のストレッサー(ストレス要因)がかかっている状態です。ドーシャが乱れてアーマが蓄積することになり、体と心、さらには行動の面にストレス反応が起こります。このようなストレス反応に強くなるためには、体の負担に対する消化力(ボディリ・アグニ)のほか、心の体験に対する消化力(メンタル・アグニ)が重要です。この消化力が、ストレス解消能力となります。この力を高めるには、純粋な制約を体験することが最も有効です。発生してしまったストレスを解消するには以下の方法があります。

​症状別の鎮静療法と浄化療法

 ここまで述べてきたアーユルヴェーダの治療法則に従って、具体的な対照法をご紹介します。ただし病気には、些細な症状に見えても重度なケースがあり得ますので、心配な時はきちんと現代医学的な検査をうけることをおすすめします。そのうえで、特に問題がなかった場合は、これからご紹介するようなセルフケア(自己治療)を行なってみるとよいでしょう。以下はカテゴリー別にした各症状の鎮静療法と浄化療法です。それぞれをクリックして参考にしてください。

  • かぜ
    ヴァータやカパの乱れによってアーマが蓄積し、そのアーマが浄化される過程で風邪の症状が出ます。ですから、むやみに薬を飲まず症状を経過させるようにするとよいでしょう。寒気や関節痛がある場合はカパやヴァータの異常、体熱感が強く咽頭の灼熱感がある場合はピッタの乱れが考えられます。それぞれの状況に応じた鎮静療法と浄化療法を行うとよいでしょう。 【鎮静療法】  ヴァータを鎮めるには休息が必要です。体を冷やさないよう、食事は温かい液状のものだけにして胃腸を休めます。ゴマ油や塩湯を使ったうがいがおすすめです。食欲が無い場合には、ショウガジュースにハチミツを加え、レモン汁やコショウ、クミンなどを振り掛けたものを飲むと、消化の火を促せることでしょう。また、ピッタを鎮めるためには冷ました白湯をたっぷりと摂ります。コップ1杯の牛乳(できれば豆乳)にターメリックを小さじ1/4ほど加えて温めたものを、1日2回空腹時に飲むのもようでしょう。そのほか、ターメッリクかコリアンダーを浸出させたティーを飲むか、そのティーでうがいをすることも効果的です。熱がなくて咳や痰、鼻水が出る場合は、絶食するか、ナスヤ、ジャラネーティ(塩湯で鼻を浄化する方法)などで対処してみしょう。頭痛がある場合は、ぼんのくぼの周辺にある天柱や風池のツボにアプローチする処置が効果的です。そして、感昌時にはオイルマッサージを控えましょう。これは、感昌そのものが浄化の過程なので、オイルマッサージで浄化を進めると体に過剰な負担をかけることになるからです。 【浄化療法】  胃腸に負担をかけないよう、白湯やショウガなどで消化を促します。スープや白湯を摂ることでできるだけ水分を補い、夜遅くには食事をとらないようにしましょう。
  • 不眠症
     ヴァータやピッタの乱れがあるか、ラジャスが増大したときに症状があらわれると感がられています。精神的ストレスや神経症による入眠困難、途中覚醒などは、ヴァータの異常が原因だと言えるでしょう。また、深夜に目覚めるのはピッタが過剰になるためと考えられます。ヴァータとピッタをバランスさせる鎮静療法と浄化療法を行なってみましょう。 【鎮静療法】  ヴァータとピッタを鎮静させるためにぬるめのお湯(38〜40℃)に入った後、就寝前に、人肌に温めたオイルで頭部や耳、足裏などをマッサージしましょう。ヴァータのアンバランス度が高い人はゴマ油、ピッタのアンバランス度が高い人はオリーブオイルがおすすめです。このとき、ラベンダーやローズ、白檀などを室内に香らせるとよいでしょう。自分でマッサージをしても効果的ですが、他人にやってもらうとさらに効果が上がります。また、コップ1杯の温めた牛乳(できれば豆乳)にギーや黒砂糖を小さじ1杯程度加えたものを飲むのもよいでしょう。だだし、アーマを溜めて翌朝に体が重くなることもあるため、飲みすぎないようにしてください。生活のリズムの乱れからヴァータが増悪し、その影響で不眠になっている場合は、できるだけ昼間は太陽に当たって活動します。さらに、22〜23時の間には就寝して生体リズムを整えましょう。近年は、スマートフォンのブルーライトが生体リズムを乱し、不眠の一因になっているということも知られてきました。23時以降はスマートフォンなどをみないことも効果的です。ヴァータとピッタを同時に鎮静化するには、ラジャスをバランスさせるヨーガの瞑想や呼吸法(三段式呼吸や片鼻呼吸であるナーディー・ショーダナ)を毎朝あるいは夕方に行うとよいでしょう。また、「無判断」を実践することも効果的です。目を閉じて今の自分の心の中を客観視し、判断せずにただ眺めるのです。このような「マインドフルネス」を1日3分間でもいいので実践していると、心身のドーシャバランスを維持できるようになるのです。
  • 疲れやすい
     カパやヴァータの異常に、ときにはアーマの蓄積が加わって疲労になります。大抵はアグニが弱っており、その結果、オージャスの定価が起こって疲労感が出てくるのです。そのため、カパやヴァータの蓄積を鎮静したり、浄化したりすることが必要になります。またアーマを消化しきることも、浄化療法の過程で必要になります。 【鎮静療法】  労働などにようる疲労が原因でヴァータが乱れたときには、休息が必要です。体を温めるためにサッと入浴したり、温めたゴマ油でオイルマッサージしをすると効果的です。また、甘いサツマイモや黒砂糖、甘草、ショウガ入りのハーブティーなどをとるとよいでしょう。朝から体がだるい場合は、カパの乱れが考えられます。熱めの湯で入浴してサッと体を温めた後、ガルシャナ(乾布摩擦)で皮膚を刺激しましょう。入浴時にはスパイシーな香りを効かせるのも良いでしょう。また、アメリカンコーヒーを軽く1杯飲むというのも良いでしょう。朝食は、温めた牛乳(もしくは豆乳)にショウガ、ウコン、シナモンなどを入れたものだけにします。夕食は量を少なくし、揚げ物や肉類を控えましょう。心のドーシャの乱れに対しては、瞑想と呼吸法、ヨーガのアーサナ(ポーズ)が効果的。毎日少しずつでも続けましょう。 【浄化療法】  ショウガや白湯飲みを励行します。夕食を軽めにするなどして、食べたいものを完全に消化させるよう心がけましょう。ピッタやカパの乱れがある人は、家庭でできる浄化療法(週末半断食など)を行なってもよいでしょう。ただし、ヴァータのアンバランスが高い人は控えてください。半断食よって空腹を感じる時には、細胞が栄養不足を感じています。オートファジーが進み、体内の異常細胞が浄化されていると考えられるのです。
  • 腰痛、肩こり、背部痛、月経痛
     ヴァータの乱れとラジャスの増大、アーマや瘀血(粘度が高く鬱滞した血液。ピッタ過剰時に発生することが多い)の蓄積が原因で体内各所のスロータスが詰まると、ヴァータが増悪します。すると、腰痛や肩こり、背部痛、月経痛などが起こります。この症状に至るプロセスは、月経中の症状や月経前症候群とも共通しています。 【鎮静療法】  ヴァータを鎮めるには、食事や入浴のときに体を冷やさないよう配慮します。月経中を避けて、ゴマ油を使った全身(足裏まで)をオイルマッサージするのもおすすめです。もし、月経中で月経痛が強い場合は、局所的(腰周囲や足裏など)なオイルマッサージであれば浄化療法にあたりませんので問題ないでしょう。アーユルヴェーダでは、月経中の浄化療法を禁じていますが、鎮静療法として行う局所的なケアであれば問題ないと思われます。また、ラジャスを増やさないように激辛物の食べ過ぎは控えましょう。ラジャスを鎮めサットヴァを増やすために、瞑想や呼吸法、ヨーガのポーズを毎日行いましょう。特に、胃腸に負担をかけないよう、白湯やショウガ(ピッタ過剰時には生のスライス、ヴァータやカパの過剰時には茹でた後に絞って使う)などを取って消化を促します。また、夜遅くには食事を控えましょう。 【浄化療法】  腰痛の85%ほどは、精神的要因が関与していると言われています。これはまさに、ラジャスが増えることなどが関係しているのでしょう。ラジャスが増えるとヴァータやピッタが増悪し、瘀血としてアーマが蓄積します。瘀血によって存在菅内外の椎骨静脈叢の鬱血が起こると、鬱血が脊髄神経を圧迫して腰痛や肩こり、軽痛を起こすのではないかと推定されます。この場合、ラクタモークシャナ(潟血露療法・刺絡療法:湿式カッピング)によって、背部や腰部違疼痛を浄化することが必要です。脊柱管内の椎骨静脈叢はバトソン静脈叢と呼ばれていますが、ここには静脈弁が少ないために鬱滞が起きやすくなり、それによって脊髄神経が圧迫されることがあります。そして、脊柱にそって存在する交感神経幹が脊柱管外の静脈叢の鬱血によって循環障害をきたし、脊柱に沿った箇所の痛みや内臓の不調を起こすことが推定されます。ちなみに、脊柱管内外の静脈叢は、ヨーガでスシュムナー菅と呼ばれる構造と一致するとも考えられます。スシュムナー菅の流れをスムーズにし、脊柱管内外の静脈叢に瘀血を溜めないようにするためには、食事を減らして静脈血量を減らすことや、脊柱を捻るような体操をして静脈叢の流れを促すことが有効だと考えられrます。また、背筋と腹筋の強化なども効果的でしょう。
  • 便秘
     主にヴァータの乱れで起きますが、カパの異常も原因となることがあります。女性に多い習慣性便秘は、会社での排便が恥ずかしいなどの理由で排出欲求を抑えるために、ヴァータが乱れて起こることがあります。繊維質や脂質の少ない食事、精神的緊張などによるヴァータの乱れも便秘の引き金になります。また、高齢者や運動不足の人にも多く見られるのは、カパの乱れが原因となる弛緩性便秘(筋力の低下などにより腸が便を押し出す力が弱くなって起こる便秘)です。ただし、単なる便秘と思いきや、大腸癌などの病気であったという例は枚挙にいとまがありません。深刻な場合などは特に、医師の診断を受けてからセルフケアを行うようにしましょう。 【鎮静療法】  ヴァータの異常の場合は、冷たい飲食物を避け、入浴によって体を温めます。起床後一番に白湯を飲むことを習慣にし、便意を我慢しないようにします。適度に油を含む食物繊維の豊富なものを摂り、就寝前にはギーを小さじ1杯と乾燥させたショウガ少々を温めたコッピ1杯の牛乳(もしくは豆乳)に加えて飲みましょう。また、食事の際には、腸内フローラを整える作用がある乳酸菌製剤や発酵食品(納豆、キムチなど)などを摂るのもおすすめです。カパの乱れの場合は、適度な散歩などがよいでしょう。朝夕30〜40分程度の散歩をし、軽めの夕食を早い時間帯に済ませることも効果的です。アグニが弱っていることが多いため、白湯などを摂ってアグニを高めることも大切です。アロエジュース、ギーと牛乳(もしくは豆乳)を混ぜた物、海藻類、漢方薬、アーモンドやクルミ(1日1握り程度)を摂るとよいでしょう。一方、メンタルドーシャであるラジャスを調整するためには、瞑想やヨーガの呼吸法がよいでしょう。特に下腹部を刺激するヨーガのポーズがおすすめです。 【浄化療法】  浣腸療法(バスティ)が適しています。薬用オイルがなくても、ゴマサラダ油30〜60ml程度を使い、肛門から数cmのところに注入します。すると蠕動運動が起こり、ゴマ油の有用成分が粘膜から吸収されます。薬用オイルに岩塩や薬草の煎液を薬300〜700ml加えたもので浣腸するような方法は、医療機関でなければ難しいのですが、コーヒー浣腸1000ml程度を注入するのであれば、比較的安全に自宅でセルフケアとしても行うことができます。このように大量に注入するときには、肛門から20cm程度の場所までカテーテルの先を入れるのがポイントです。直腸の穿孔(穴をあけること)をおこさないよう注意しながら、圧力が低い状態(高さ50cm以内)で入れるとよいでしょう。
  • 食欲不振と嘔き気
     カパの乱れが原因で起きますが、胸やけがある場合はピッタの乱れも加わっています。メンタル・ドーシャの乱れが主原因となることもあります。 【鎮静療法】  カパを鎮めるため、食事は暖かくて消化しやすいものを少量摂ります。ショウガやクミン、シナモン、ターメリック、フェンネルなどのスパイスを適度に使いましょう。ピッタを鎮めるには、刺激物や塩分を控え、牛乳や豆乳を摂ります。サットヴァを増やすには、瞑想や呼吸法、ヨーガのポーズを毎日行います。特に食事の30分〜1時間ほど前に行うとよいでしょう。 【浄化療法】  白湯やショウガ(ピッタ過剰時には生のスライス、ヴァータやカパの過剰時には茹でた後に摺って使う)を摂り、アーマ・パーチャナを浄化療法の前処置として行います。消化によいお粥(キチュディと呼ばれる豆と米の粥など)に、ショウガなどのスパイスを入れて食べるとよいでしょう。ただし、肝炎や胃癌、膵臓癌などの場合もありますので、セルフケアは医師の診断を受けてから行いましょう。
  • 関節痛
     関節痛の中でも特にリウマチは、アーマヴァータと呼ばれています。アーマの蓄積、ヴァータあるいはカパの乱れが関係していると考えられているためです。また、痛風はアーマピッタと呼ばれます。これは、急性期などにはピッタの異常も加わっているという考え方によるものです。 【鎮静療法】  ヴァータを鎮めるには、体を冷やさないように注意し、特に関節を暖かくします。入浴をし、温かい食事を摂ります。食べ過ぎはいけません。全身あるいは局所をコマ油のマッサージをするか、ヒマシ油の湿布をするとよいでしょう。最初から局所マッサージをすると一時的に悪化することがありますが、じきに改善します。最初に、アーマ・パーチャナとして食事を是正した後、全身のマッサージを行い、その後に局所のケアという順序でケアするのがおすすめです。患部が熱をもっている急性期には、安静に過ごしましょう。しっかりと白湯を摂るほか、ターメリックや黄柏(漢方薬の一種。ミカン科のキハダの樹皮を乾燥させたもの)の粉をペースト状にして湿布するのも効果的です。カパの乱れが原因であれば、全身の体操や散歩を毎日続けるとよいでしょう。サットヴァを増やすために、瞑想や呼吸法を行なったり自然に触れたりすることもおすすめです。痛む部分に負担をかけないよう注意しながら、ヨーガのアーサナを行うのもおすすめです。 【浄化療法】  アグニが弱っていることが多いので、白湯やショウガなどで消化を促します。夜遅くには食事をしないようにしましょう。週に1度は終日少食にして、あとは白湯だけで過ごします。体力があれば、家庭でできる浄化療法(例えば、3日間ほど半断食で過ごすなど)を行なっても良いでしょう。
  • 花粉症
     カパの乱れが主な原因であり、春に多く発症するのはそのためです。カパの増大により、アーマの増大を伴うことが多いでしょう。同時に、アグニの弱まりも多く見られます。タマスの増大、サットヴァの減少などによる精神的ストレスに起因することもあります。季節性のアレルギー性鼻炎は、花粉症やハウスダストが原因で起こるため、カパを鎮静化するだけでは症状はおさまらない場合もあります。血管運動性鼻炎(非アレルギー性鼻炎の一種)は、ハウスダストに対するアレルギーが考えられます。アーユルヴェーダでは花粉症を、タルパナ・カパが増大した場合と、ウダーナ・ヴァータが増悪した場合に分類しています。これらは、脈診ですぎに診断することができるもので、脳脊髄液の過剰によるものがタルパナ・カパの増悪に相当するものと考えられています。ただし、ウダーナ・ヴァータの増悪による場合であっても、鼻のヴァータが乱れてカパが蓄積することもあるので、結果的にカパの花粉症が出ることがあります。 【鎮静療法】  カパの調整をするには、体を冷やさないことが大切です。冷たい飲食物や乳製品の摂りすぎは避けましょう。特に夜間には、果物や甘い物を食べないようにするとよいでしょう。夜にシャンプーをした場合には十分に乾燥させたり、運動したり、規則正しい生活をしたりと、カパを減らすように心がけましょう。また、背部(上背部正中)のガルシャナを行うのもおすすめです。近年では、腸内フローラの異常で花粉症が起こるということが知られ、乳酸菌製剤による改善が報告されています。花粉症に有効な乳酸菌製剤を摂ったり、消化力が十分ある昼間から朝にかけて発酵食品を摂ったりするのも効果的でしょう。また、心のドーシャのバランスを整えるには、瞑想や呼吸法、ヨーガのアーサナを行うとよいでしょう。毎日朝夕2回の実践が理想です。 【浄化療法】  胃腸に負担をかけないよう、白湯やショウガ(ピッタ過剰時には生のスライス、ヴァータやカパの過剰時には茹でた後に摺って使う)、クミン、シナモン、ターメリックなどで消化を促進しましょう。夕食は麺類や雑炊などの消化しやすいものにし、遅い時間帯には摂らないようにします。朝の入浴や、温めたゴマ油によるオイルマッサージ、ゴマ油やアヌタイラなどの点鼻も効果的です。塩湯にターメリックやショウガを少々加え、鼻洗浄であるジャラ・ネーティを行うのも良いでしょう。
  • 肥満症
     一般的には、カパの乱れが原因だとされています。ストレスによるラジャスの増大からヴァータやピッタが異常になり、さらには食行動が異常になって食べすぎることが要因だと考えられるためです。その結果、カパが増大すると推定されます。 【鎮静療法】  カパのバランスを整えるためには、体を冷やさないことが大切です。冷たい飲食物は控えたほうがよいでしょう。朝の入浴やガルシャナは効果的なのでおすすめです。散歩などの適度な運動を毎日20〜40分(1日8000歩程度が目安。そのうち20分ほどは速足歩行をすると理想的)行うのもよいでしょう。サットヴァを増やすには、瞑想と呼吸法、ヨーガのアーサナを行うと効果的です。増えすぎたカパのバランスを整えるためには、カパラーバティの呼吸法を行ってみてください。カパの増大とアーマの蓄積に対し、糖質制限が有効なケースもあります。ただし、糖質制限のために根菜類なども控えると、便秘を招いて腸内フローラを乱すことにつながりますので要注意です。根菜類などは摂りながら、まずは小麦と乳製品を制限してみましょう。特に白い食パンや菓子パンなどは、砂糖よりも血糖値を上げると言われていますから、控えてみることをおすすめします。また、食事のときに、炭水化物などではなく野菜類から食べ始めることで、食後の血糖とインスリンの分泌が抑制され、脂肪の蓄積を抑える効果も期待できるでしょう。 【浄化療法】  ショウガ(ピッタ過剰時には生のスライス、ヴァータやカパの過剰時には茹でた後に摺って使う)や白湯を摂ってアグニを高め、アーマを消化します。食事直前に白湯をコップ1杯飲むと、食欲が制御されて痩せやすくなります。夕食を軽いものにするなどし、食事を完全に消化できるよう心がけます。夕食を麺類やスープにしてみてください。浄化のためには、ヴィレーチャナという瀉下療法や、浣腸療法もおすすめです。特にコーヒーは、カパを鎮静化し、便によって過剰なヴァータを排出することができるのでコーヒー浣腸もよいでしょう。カパを浄化するという面では、ナスヤ(経鼻法)や催吐療法も適しています。特に鼻の調子が悪い人は、ナスヤをしてみましょう。
  • 皮膚炎
     アーマの蓄積のほか、ピッタやカパの乱れが原因だと考えられます。ヴァータの異常の場合もあります。特に老人性掻痒症は、ヴァータが増悪した乾燥状態のために起きると言えるでしょう。また近年は、食物アレルギーで皮膚炎などが起きるケースが増えています。アーユルヴェーダ的観点からは、肉や魚、塩の多い食品、辛い食品などを食べすぎるとピッタが増悪するため、皮膚炎などをおこすことも考えられます。現代医学的には、食物によって腸内フローラが変化するために皮膚病変が出ると考えることもできます。食物アレルギーの関連については、今後の研究が待たれます。 【鎮静療法】  ピッタの乱れがある場合は、激辛食品をはじめとする刺激物や塩分、アルコールなどを控えましょう。また、カパの乱れが見られる場合は、肉類などの動物性食品や揚げ物などを控えるといいでしょう。オイルマッサージのときには、ゴマ油やオリーブオイルにターメリックを溶かし込んだターメリックオイルを使用するのがおすすめです。メンタル・ドーシャの乱れには、怒ったり敬意を持ったりしすぎないよう注意することです。瞑想や呼吸法を行い、マインドフルネスを実践しましょう。 【浄化療法】  夕食を軽いものにするなどして、食べたものを完全に消化させます。カパの乱れがある人やカパ体質の人は、家庭でできる浄化療法として寫下法を行うとよいでしょう。普段からショウガ(特に、生のショウガのスライスや摺りおりし)や白湯を摂って消化力を高め、アーマを溜めないようにします。週1日は小食で過ごして、アグニを立て直すこともおすすめです。
  • 手足のしびれと冷え
     ヴァータが乱れて高血圧を発症している可能性があるため、血圧測定をしておくとよいでしょう。その他には、ヴァータを鎮める生活を守ることです。 【鎮静療法】  規則正しい生活をし、冷たい飲食物を控えるなどして体を冷やさないようにします。ゴマ油を使ったオイルマッサージもおすすめです。全身をできなくても、前腕と下腿部だけでもオイルマッサージを行うとよいでしょう。使用するオイルは、ゴマ油のみでなくても構いません。例えば、ラベンダーなどの香り入れてもよいでしょう。ナラーヤナタイラやダシャムーラタイラなどを使うのもよいでしょう。 【浄化療法】  アーマ・パーチャナをした後、アビヤンガを行い、その後に浣腸をするといいでしょう。
  • めまい、たちくらみ
     ヴァータの症状であることが考えられます。血圧が高くなりすぎたり、逆に低くなりすぎている場合があります。また、低血糖などの場合もあります。また、低血糖などの場合もありますので、セルフケアを行う前に、耳鼻科や循環器科で精密検査を受けることをおすすめします。 【鎮静療法】  前記のヴァータを是正する一般的な生活に留意します。低血糖の場合、タンパク質が低いため、糖新生の酵素系をつくるタンパク質がなくて、低血糖を引き起こすことがあります。そのときは、タンパク質を積極的に摂取することと、胃腸のアグニを活性化する食生活に留意します。 【浄化療法】  過剰なヴァータを浄化するトリートメントとして、浣腸やナスヤがおすすめです。胃腸が弱くなっていることが多いので、アーマ・パーチャなを行うとよいでしょう。
  • 動悸
     ヴァータとラジャスの乱れが考えられます。24時間心電図などの精密検査をおすすめします。脈の不整や頻脈などがあれば、甲状腺機能亢進症なども考えられますので、循環器ないかなどの受診をおすすめします。諸検査で異常がない場合のみ、アーユルヴェーダ的治療を試みてください。 【鎮静療法】  ヴァータとラジャスを鎮静化するには、忙しすぎる生活やストレスの多い生活を是正しましょう。ヨーガの呼吸法や瞑想法などを行い、マインドフルネスを実践するとよいでしょう。 【浄化療法】  ヴァータの浄化療法を行います。心臓の裏側にあたる背部の筋肉が凝って辛い場合などは、その箇所をラクタ・モークシャナ(瀉血療法)をするのもよいでしょう。
  • 眼精疲労
     ヴァータやピッタの乱れが原因だと考えられますが、西洋医学的には、緑内障や屈折異常、全身疾患の可能性もあります。眼科で諸検査を受けることをおすすめします。そのうえで、単なる眼精疲労であった場合は、アーユルヴェーダ的な治療をされるとよいでしょう。ドライアイは、ヴァータの乾燥性とピッタの刺激性が強まることによる症状です。しかし眼科では、単にヒアルロン酸製剤や月経食塩水の点眼をすすめるのみという場合があります。そのときは、アーユルヴェーダ的なケアが効果的でしょう。 【鎮静療法】  ヴァータやピッタを鎮めるため、刺激物や油ものなどを控えて、消化を促しましょう。漢方医学においても、目の疲れは肝臓の弱りからくるといわれています。また、肝臓の異常はピッタの異常だと言われますので、ネートラ・タルパナが効果的でしょう。ギーを眼軟膏のようにして目尻につけるだけでも、特にドライアイなどには効果があります。アスタキサンチンやアントシアニジンをサプリメントなどで摂るのも効果的です。そのほか、サットヴァを増やす生活を心がけます。ヨーガの瞑想や呼吸法に加え、首や脊柱を柔軟にするヨーガのアーサナを毎日行ってください。 【浄化療法】  ヴァータやピッタを浄化する浣腸や瀉下療法などが適応です。ナスヤで効果が出ることもあります。特に、クンクマディタイラと呼ばれる、サフランが含まれた薬用オイルの点滴が奏功する場合があります。
  • 冷え症
     冷え症は、末梢循環障害によるものですが、アーユルヴェーダではヴァータ異常(カパ異常も加わっている場合も)であると考えます。双方のドーシャとも、冷えという性質が共通しています。原因としては、体質に合わない食事療法などが考えられます。ヴァータ体質なのに栄養素不足な食事をしたり、玄米菜食や野菜食だけに頼った偏食をしたりすることが一つの要因でしょう。現代医学的には、自律神経失調症だと考えられます。対策としては基本的に、ヴァータ増悪を鎮静化するような生活習慣を守ることが大切です。 【鎮静療法】  ヴァータ異常の場合は、動物性の食品が必要です。野菜だけに偏らず、ヴァータを鎮静化するような食事を摂りましょう。また、薄着をしたりプールで体をひやしたりして、ヴァータを見出さないようにします。入浴の際には、40〜41℃ほどで10分間の半身浴か全身浴を行い、体を温めます。もしくは、ゴマサラダ油を使った下腿オイルマッサージの後、42℃で5分間の足浴を行いましょう。貧血の場合は、血液検査を行った上で、鉄分だけでなく銅や葉酸、B12などを補うようにマルチビタミンやマルチミネラルなどを摂るのもよいでしょう。アシュワガンダー、グッグルー、トリファラーなどのハーブを摂取するのもよいでしょう。 【浄化療法】  ヴァータを浄化する浣腸として、30〜60mlのゴマサラダ油でバスティを行うとよいでしょう。冷えと同時に便秘がある場合は、体の状態を見ながら、便秘にならないような頻度で繰り返すこともよいでしょう。
  •  癌は基本的に、カパ性の疾患であると言われています。ヴァータとカパの増悪と、その結果できるアーマの蓄積によって発生すると考えられているためです。さらに、炎症が激しい場合は、ピッタ異常も加わります。体質的には、カパ体質のほか、自分の気持ちを抑制しやすいヴァータ・カパ体質に多いと思われます。 【鎮静療法】 食事を腹七分目にして、消化が完全に行われるようにしましょう。食事は1日1〜2食(水分は、白湯やスープ程度にする)にするのが理想的ですが、大量に食べてしまうようであれば3食にして、できるだけ少量ずつ食べましょう。 糖質制限を行いましょう。特に、小麦と乳製品の制限です。最初の2〜3ヶ月間で体重が減少し、体調がよくなります。ただし、制限の程度は体質によって見極めましょう。カパ体質であれば、糖質量を1日あたり40g以下にするような糖質制限もよいでしょうが、ヴァータ体質であれば1日あたり40〜130g(お茶碗1杯)程度には緩めなければ、怠さや便秘、筋力低下が顕著になります。ピッタ体質では、もう少し糖質摂取量を増やしてもよいでしょう。自分の体の声を聞きながら、摂取量を調整してみてください。 循環を促進するべく、運動や温熱療法、オイルマッサージを励行しましょう。癌細胞は、血流が悪く酸素分圧が低い場所を好み、解糖系だけで生きることができると言われています。 食物繊維が豊富な食事を摂り、腸内細菌叢を整えましょう。腸管免疫系が弱くなると、全身の免疫機能が低下するもととなります。また、動物性タンパク質を過剰摂取すると、特に60歳以上の場合は発がんを促す危険性があります。 糖質(特に、小麦と乳製品)の除去と、油分の一時的な制限をするアーマ・パーチャナを、定期的(月2〜4回程度)に実践されることをおすすめします。AGEsなどの蓄積を防ぐためです。 飲酒・喫煙は慎みましょう。糖質制限という面では蒸留酒であれば問題ないということになりますが、アルコールは分解の途中でアルデヒドになります。アルデヒドには発がん性がありますので、アルデヒド分解酵素が乏しい食道などの粘膜に、食道癌が発生するもととなります。そのため、できるだけ飲酒も控えた方がようでしょう。また、肺癌の発生を促す喫煙も控えましょう。 乳製品・塩は控えた方がよいでしょう。牛乳は、乳癌や前立腺癌の発生を促すと言われています。またゲルソン療法では、塩の摂取を厳密に禁じています。塩が胃癌などを誘因するもののひとつであるとかんがえれば合理的ではありますが、極端に制限するとうつ気分になることもあります。2週間程度の期間をかけて徐々に減らしながら、馴らしていきましょう。 ビタミンC(50〜125g)を、血管痛を防ぐ少量の硫酸マグネシウムとともに週1〜3回ほど点滴します。リポゾームにビタミンCを封入したサプリメントなどもおすすめです。ビタミンCの大量点滴療法は、それだけで癌細胞を全て死滅させる可能性は低いと考えられています。しかし、抗がん剤の副作用を軽減させる効果は期待できまs。この治療では、ビタミンCが抗酸化剤でなく酸化剤として作用することによって癌細胞を死滅させます。これは、正常細胞はカタラーゼという酸化を防ぐ酵素を持っているため、ビタミンCによる酸化ストレスを受けず、その一方で、カスラーゼを持たない癌細胞はビタミンCによる酸化によって濃エージをうけるという特徴を生かしています。食生活においても、ビタミンCなどのビタミン類を十分に摂取することは、全身の代謝や免疫機能のために必要なことです。普段から食物もしくはサプリなどで摂取するとよいでしょう。 体内の循環を良くするために適度な運動を行いましょう。糖質制限や小麦乳製品制限といった食事療法だけを厳密にやっていても、循環が良くなければ効果が半減してしまいます。また、運動によってメンタルストレスが緩和されると免疫機能にも影響を及ぼすことは精神神経免疫学でも衆智されています。運動のほか、ヨーガのポーズや瞑想、呼吸法なども実践すると良いでしょう。 【浄化療法】  癌の人は、カパやアーマが蓄積していると考えられます。アーマ・パーチャナをしっかりと行った後、浣腸療法(バスティー)やパンチャカルマを定期的に受けるのがおすすめです。できることなら1ヶ月間ほど、集中的にパンチャカルマを受けるとよいでしょう。アーユルヴェーダ医師のサダナンダ氏は、インドのワゴリのアーユルヴェーダ大学において癌患者に対するパンチャカルマ療法を行い、効果を得ています。 【各群の例数と病状の分類(8〜12ヶ月間の治療による結果】 治療方法:パンチャカルマを主体とする。潜在型治療(食事、リラックス) A群:アーユルヴェーダ治療のみ群 B群:現代医学的治療の無効群に対するアーユルヴェーダ的治療群 C群:現在、放射線や化学療法、手術など現代医学的治療をしながらアーユルヴェーダ的治療を補足 D群:現代医学的治療法でがんが管理されており、補足的な治療としてアーユルヴェーダ的治療を行っている群
  • 健康な子供を授かるために
     アーユルヴェーダの産科学は、小児科に含まれています。アーユルヴェーダのヴァージーカラーナ(強精法)によると、成人した男女(男性24歳〜、女性16歳〜が目安)が、パンチャカルマに基づく浄化療法を受け、生殖組織の機能を高める薬草(アユヴァガンダ、射たヴァリー)を飲んだ後、良い日の良い時間帯にマントラを唱えながら性行為をすることで、よい子孫ができると伝えられています。特定のマントラありませんが、神聖なものでしょう。また、アーユルヴェーダでは、授精時の両親の体質がドーシャバランスの状態が、子供の体質を決定すると考えています。例えば、両親ともにピッタ体質の場合や、酒に酔うなどしてピッタが増大している場合には、ピッタ体質の怒りっぽい子供が生まれるとされています。ですから、子供のドーシャバランスのために、両親が異なる体質であるよう、また両親のドーシャがバランスしているようにパンチャカルマで浄化された後に、子供を妊娠するべきであると教えています。ドーシャがアンバランスにならない季節に妊娠するよう調整することもすすめられています。例えば、ヴァータ体質とピッタ体質の親の場合、カパの季節(春)に妊娠すれば、ヴァータ・ピッタ・カパのバランスがよい体質(トリドーシック・プラクリティ)の子供が生まれるとされています。さらに、女性は妊娠前の月経中にも、肉体的、精神的ストレスや性的刺激を避けることが必要だと言われています。それだけでなく、妊娠時の男性ドーシャの乱れも、子供に影響すると言われています。夫婦いずれかにドーシャの異常があれば妊娠に影響しますから、夫婦ともに治療が必要なのです。また、不妊については、現代医学的には1/3が夫の原因であると言われますが、男女同じ様に妊娠に関係するというアーユルヴェーダの考え方は合理的です。一般的に、子供を授かりたいと望む夫婦は、まず、女性の基礎体温が二相性かどうかをみて、排卵の有無を確認します。女性の生殖期間の問題がある場合は、パンチャカルマによって全身を浄化します。そのほか、以下のような対処法が考えられます。アーユルヴェーダ医師によるコンサルテーションを受けた上で、実践してみると良いでしょう。 夫婦のドーシャ異常によって冷えや疲労感などが強い場合は、ヴァータ異常が考えられますので、体を冷やさないことが大切です。例えば、敵機的に温泉で体を温め、ストレスのない状況でバランスの良い食事を摂取します。夫婦でマッサージをしあうことも、ヴァータの沈静化や循環の促進に良いでしょう。お灸や温灸、オイル湿布などで、体を温めることも効果的です。 食事の高血糖によって血糖値スパイクが発生すると、AGFs(特にToxic AGFs)が生成され、卵巣機能を障害すると言われています。妻が肥満で多嚢胞性卵胞などがある場合は特に、カパを減らす食事や食後の高血糖を緩和するような食べ方をすることで、妊娠能力が高まることもあります。 夫婦の生殖器管が十分に発達熟成しきっていない場合は組織ダートゥを生成させる種々のラサーヤナ薬をすすめています。詳細はアーユルヴェーダの医師に相談するとよいでしょう。ラサーヤナ薬は、日本では薬事法の関係で入手できませんが、India Abundance, iHerb.comなどのサイトを介して個人輸入することができます。ただし、インターネットで入手できるアーユルヴェーダ薬の約20%が農薬や重金属などで汚染されているということがJAMA(アメリカの医師会雑誌)に報告されているため、できるだけOrganicと銘打った製品を購入しましょう。 どうしても妊娠ができない場合は、考え方をシフトすることも大切です。子育てではなく別のことが、今世の修行なのだと認識すると良いでしょう。また、自分の子供がいないということを、すべての子供が自分の子供であると考えることもできます。自身の子供ではなくても、御縁のある子供を慈しむのも良いでしょう。
  • 月経
     月経は、浄化のための重要なプロセスであり、一種のラクタ・モークシャナ(瀉血療法)だと考えることができます。女性の寿命は男性よりも訳7年長いとされており、それが一生分の月経出血の期間に相当することから、そのように考えられています。月経による浄化を完了させるうえでは、12の注意点があります。 十分な休息をとる:仕事が忙しいときは少しセーブして、ゆとりを持つと良いでしょう。性行為は控え、ヴァータの乱れを防ぎましょう。 昼寝を控える:昼寝によって血液の鬱滞や循環障害が進み、オージャスの通路を塞いでしまうことがあります。インドでは、昼寝を継続すると子宮筋腫になる可能性もあると考えられています。 軽い運動をする:日頃から軽い散歩や運動習慣がある人は、早足で散歩をしましょう。スムーズで安定した軽い運動はヴァータを調整し、月経血の排出を促す作用があります。ヨーガでは、合蹠(両足裏を合わせて座る)、ねじり、膝のうしろを伸ばすポーズなどがおすすめです。肩立ちや逆立ちのポーズは、下腹部のアパーナ・ヴァーユ(下腹部で働くヴァータのひとつ。下に向かって働く)を乱すので控えましょう。 ヴァータを鎮静する食事を摂る:月経中はアグニが低下しています。暖かくて消化しやすいものを食べ、ヴァータを鎮静しましょう。炭酸飲料、チーズ、ヨーグルト、肉、チョコレート、揚げ物、小麦食品などは控え、夕食の量は少なめにします。 味と甘味がほしいときは塩味を先に摂る:月経前から月経中にかけての時期は、ヴァータとピッタを鎮静化させようとする欲求が起こり、甘味や塩味が欲しくなる時があります。アーマが蓄積し、消化器系に栄養がいきわたっていないためです。そんな時は、まずは塩味を取って欲求を満たすと、甘味への願望が少なくなります。それでも甘味が欲しい場合は、新鮮な牛乳か豆乳、または豆乳製のホイップクリームにハチミツを入れて摂ると良いでしょう。 入浴を控える:月経血は温水に入ると増加し、冷水に入ると減少します。月経血が量が多い期間は入浴を控え、シャワー程度にすると良いでしょう。 洗髪を控える:頭部に触れるとヴァータを乱しやすくなります。月経の1〜2日目だけでも洗髪を控えましょう。 頭部のマッサージを控える:頭部のマッサージをしすぎるとヴァータを悪化させやすくなります。洗髪のほか、アビヤンガも控えた方がようでしょう。月経開始から4〜5日経った後に、温かいゴマ油で頭部をマッサージし、数時間放置して油を吸収させた後に洗髪すると、ヴァータを鎮静させる力が強くなると言われています。ただし、オイルを使わずに行う5〜10分間程度のチャンピサージ(頭皮マッサージ)であれば、ヴァータを鎮静させる効果を期待できますので、問題はないでしょう。 月経血の流れを阻害しない:月経は浄化の過程です。タンポンの使用を控えるなどして、月経血の流れを阻害しない様にしましょう。 性生活を控える:アパーナ・ヴァーユの流れを阻害してヴァータを乱すため、セックスは控えましょう。 五感への過剰な刺激を抑える:月経中は、色や香り、音などに敏感になっています。五感への刺激を抑え、やすらげる環境を整えましょう。 意識を内側に向ける:浄化の時期ですので、自分の精神と身体に注意を向けやすくなります。このタイミングを生かし、瞑想などを行なって自身の内側のアーユルヴェーダの智慧に気づくことを試してみましょう。
  • 月経痛
     アーユルヴェーダでは、瘀血(鬱血したり、粘性が高くなった血液)の異常とヴァータの異常が原因として考えられます。 【鎮静療法】  ヴァータを乱さないよう、規則正しい生活や食事を心がけましょう。また、瘀血が増加するということは、ピッタが異常になっていますので、ピッタを鎮めるように辛いものや塩味の強いものは控えます。特に小麦と乳製品を控え、緑黄色野菜を十分に摂りましょう。タンパク質は、魚や鶏肉、油分の多すぎない赤身を選びます。水分は、適温の白湯で1日1〜2l程度を摂るようにしましょう。アーユルヴェーダ医師から、薬草製剤を勧めてもらうこともできます。基本としてトリファラーと呼ばれる浄血薬がよいでしょう。さらに、スクマラム・ワクタ、スクマラ・カシャヤ(月経にまつわる特効薬アショカを含む煎じ液)、チャンドラブラーヴバ錠など、月経痛や女性生殖器の疾患に頻用される薬を摂るのも良いでしょう。 【浄化療法】  ヴァータやピッタを浄化するために、浣腸や瀉下療法を行う方法があります。また、婦人科医がいるアーユルヴェーダの医療機関であれば、ウッタラバスティ(膣からの浄化)などが可能な場合もあります。
  • 無月経、月経不順
      ヴァータ性の症状だと考えられ、原因は、寒気暴露、栄養失調、貧血、やせ、脱水、子宮の異常、ホルモン失調、精神的外傷などであるとされています。そのほか、重篤な疾患や消耗性疾患によって起こることもあります。対処法はドーシャによって異なります。 ヴァータ性無月経:温かいオイルマッサージが最適です。食事は抗ヴァータ性の滋養強壮食がよいでしょう。鉄分も必要です。 ピッタ性無月経:ターメリック、サフランを温かいミルクに加えて飲むとよいでしょう。 カパ性の無月経:代謝の低下が原因だと考えられるので、ショウガやコショウなどを積極的に摂りましょう。 ヨガのポーズや瞑想はいずれに対しても効果的です。
  • PMS(月経前緊張症候群)
     PMSには精神的要因が強く関与すると言われています。アーユルヴェーダでは、どのドーシャが主に症状に関与しているかによって分類されます。 【鎮静療法】  温かいオイルによるマッサージが効果的です。頭部、下半身、下腹部を中心に行いましょう。ヴァータ性PMSとカパ性PMSはゴマ油、ピッタ性PMSはココナッツオイルやオリーブオイルを使ったマッサージを行うのがおすすめです。ヨーガのポーズや呼吸法、瞑想法、マインドフルネスは、できれば毎日実践してください。アーユルヴェーダ医師に薬草製剤をすすめてもらう場合は、例えば基本としてトリファラーと呼ばれる浄血薬がよいでしょう。さらにスクマラム・クワタ、スクマラ・カシャヤ、チャンドラプラバー錠など、月経痛や女性生殖器の疾患に頻用される薬もよいでしょう。メンタルストレスが原因となってメンタル・ドーシャが乱れている場合もありますので、個人輸入も可能なサラスワティ・アリシュタなどの薬用酒もおすすめです。 【浄化療法】  異常に増悪しているドーシャに合わせた浄化療法が効果的です。マトラバスティと呼ばれる30〜50mlの浣腸を、ナラーヤナタイラというオイルを使って行うこともすすめられています。 【どのドーシャが影響しPMSが起きているか】
  • 月経過多
     ピッタの過剰とラクタ(血液)の乱れが考えられます。IUD(避妊リング)やピルの使用、辛いスパイスや酸味・塩味の摂り過ぎ、喫煙、飲酒などのほか、怒り、うらみ、敵意といった感情も原因になると言われています。 【鎮静療法】  ピッタを鎮めるために、熱性・油性の食物をを避け、熱や太陽にあたることや運動も控えた方がよいでしょう。収れん性や止血作用があるヨモギはおすすめです。ヨモギ3kgを600mlの湯で半量になるまで煎じ、お茶がわりに飲んでください。または、よもぎ蒸しなどで骨盤部を温めるのもよいでしょう。 【浄化療法】  パンチャカルマなどを適宜受けるのがよいでしょう。ただし、月経そのものが浄化療法だと考えることができるので、鎮静療法だけでも改善してくると思われます。
  • 帯下(おりもの)
     カパが増悪していることが主な原因と考えられます。甘味・酸味・塩味の強い食品や、重性・油性の食品、特に小麦や乳製品、砂糖は避けましょう。また、抗生物質の使用やセックスも過剰にならないようにしましょう。カパの増悪に加え、どのドーシャがアンバランスになるかによって対処法が異なります。 ヴァータ性の場合:褐色の乾燥した帯下が出て激しい月経痛があります。 ピッタ性の場合:黄色くて臭いのある帯下が出ます。化膿や血液の付着があり、灼熱感を伴うこともあるでしょう。 カパ性の場合:透明で粘性の帯下が大量に出て、重さや怠さを伴うことが多いでしょう。 【鎮静療法】  治療としてはPMSへの対処と同じく、特にカパを減らす食事を心がけてください。特に、小麦と乳製品を除去するだけでも改善したという例がありました。 【浄化療法】  パンチャカルマは、どのドーシャが増悪しているかによって異なります。基本的には、カパを減らすためのバスティやヴィレーチャナがよいでしょう。
  • 更年期症候群
     更年期症候群とは、加齢によってエストロゲンの分泌が減少するために視床下部などの異常が起こり、自律神経・内分泌・精神症状などが出現するというものです。冷えのぼせが典型的な血管運動神経症状ですが、抑鬱や不安、焦燥などの精神症状が出ることもあります。もともと、東洋の女性には少ない症状であると言われていましたが、これは、大豆食品を摂ることによって大豆に含まれているイソフラボンを摂取できるためだと考えられます。イソフラボンが腸内細菌叢によって配糖体を切られ、エクオールという植物性エストロゲンの活性本体になるのです。こうした現象は、更年期女性の2人に1人に起こるということが知られています。アーユルヴェーダでは、更年期にはヴァータが増大すると考えられています。そのため、皮膚・粘膜の乾燥や便秘のほか、髪が薄くなったりするといった症状が現れます。精神不穏・不安・不眠抑鬱などが起こることもあります。更年期障害の症状は、ヴァータの異常に加えてどのドーシャが増大しているかによって、大きく3つのケースに分けられます。対処法としては、ヴァータをはじめとするドーシャをバランスさせるための鎮静療法と浄化療法が効果的です。 【鎮静療法】  オイルマッサージを毎日行い、生殖器を若返らせるハーブ製剤をとるとよいでしょう。シャタヴァリー、アロエ・ヴェラ、サフラン、アシュヴァガンダなどがおすすめです。精神症状が強い方には、ブラフミーとしてゴツコラ(ツボクサ)を摂取するのもよいでしょう。ピッタ性の場合は、抗ピッタの薬草であるアロエ・ヴェラ、サフラン・ミルク、シャタヴァリー製剤、カパ性の場合は抗カパ薬草であるトリカトゥ(ショウガ・コショウ・長コショウの混合物)などのスパイスミックスやアロエ・ヴェラがよいでしょう。そのほか、加味逍遙散や桂枝茯苓丸といった漢方薬の有効性も明らかになっています。ただし加味逍遙散は、長期間の投与によって腸間膜静脈硬化症という副作用が出現し、下痢や下血などが起こることが報告されてるので、注意が必要です。さまざまな補完総合医療的プログラムを行っても効果が出ない場合は、ホルモン補充療法(女性ホルモン製剤の添付剤)などもよいでしょう。内服製剤によって起こり得る血栓形成促進や肝機能障害などが、比較的少ないと言われています。現代医学的方法と東洋医学的方法をうまく使い分けながら、更年期を乗り切りましょう。 【浄化療法】  アーマを溜めないように食生活に配慮をしましょう。また、アーマ・パンチャナを心がけ、パンチャカルマを受けるのもおすすめです。ヴァータの浄化にはバスティ、ピッタの浄化にはラクタモークシャナやヴィレーチャナを行いましょう。更年期は、心のドーシャが乱れてメンタル・アーマが溜まり、症状が悪化することもあります。心の問題は、ヨーガや気功、マインドフルネスなどの実践によって心を浄化することで乗り越えましょう。更年期を魂の成長過程だと捉え、心のドーシャをバランスさせるべく学ぶことが、人間としての成長をもたらしてくれます。 【更年期障害の3つのケース】
  • 子宮内膜炎
     主にピッタの異常で起こるとされ、熱と血液が鬱滞するほか、感染症や炎症を伴うことがあります。ピッタをバランスさせる必要があるため、塩やアルコール、精製糖を避けるなどの対処が効果的でしょう。スパイスの使用については、アロエ・ヴェラやターメリック、コリアンダー、サフランなどはおすすめですが、それ以外は控えます。また、ココナッツオイルとヒマワリ油以外のオイルも控えた方が良いでしょう。そのほか、ピッタを浄化するために、月経期間を外して過程でできる瀉下療法(ヴィレーチャナ)を行うとよいでしょう。
  • 子宮内膜症
     子宮内膜が他の場所に増殖する病気です。カパが増えたために起こるといわれており、感染症を伴うピッタ異常も加わります。治療では、カパをバランスさせる鎮静療法と全身の浄化療法が必要となります。体力のある人には家庭でできる瀉下療法もおすすめです。またグッグルやターメリック、コショウなどの薬草を摂ると良いでしょう。
  • 美肌
     皮膚は、触覚を司る神経器官であり、ヴァータの多い臓器と捉えることができます。またブラージャカ・ピッタと呼ばれるピッタの一種(皮膚で働くピッタ)が皮膚の輝きを維持しているため、健康的な皮膚の輝きを維持しているため、健康的な皮膚を保つためにはヴァータとピッタの働きが重要です。アーユルヴェータが考える理想的な皮膚には、油性でなめらかであり、薄く軟らかで、光沢があってキラキラと輝いており、小さく深い毛包をもつ体毛が生えているという特徴があります。このような皮膚を保つためには、アビヤンガ、指圧、薬用粉末や油ペーストによる皮膚のマッサージ、入浴、プラティマルシャ・ナスヤ(2滴ずつの経鼻法によって、顔面のしわや白髪を予防するというもの)などが効果的であるとされています。 【皮膚の色を向上させる】  ヴァータ体質の人は、乾燥していてキメが粗く、亀裂を伴う茶色い肌をしています。ゴマ油によるマッサージが最適です。ピッタ体質の人は、薄くて温かい皮膚をしています。黄赤色で汗が多く、体臭も強いです。牛乳かクリーム、ギーなどに白檀を混ぜた軟膏を塗布するといいでしょう。カパ体質の人は、滑らかで冷たく、脂っこくて白い皮膚をしています。マツバ、ターメリック、サフランなどの粉末で皮膚を摩擦したり、ガルシャナ(乾布摩擦)を行ったりするとよいでしょう。古典には、季節に応じた皮膚のケア方法も記載されています。例えば冬は、サフラン、ジンコウ、ショウブ根などの粉末をペーストにして塗布します。夏・秋は白檀、クスノキなどの粉末、雨期にはサフラン、白檀、ジンコウの粉末でケアするとよいと言われています。
  • 虚弱児を強く育てる
    母乳:アーユルヴェーダでは、新生児・乳児は母乳で育てることをすすめています。母乳にはオージャスが含まれ、免疫機能を高める作用があるからです。現代医学においても、初乳に含まれるIgA(免疫物質の一種)が消化器系から新生児の体内に取り込まれることで、免疫を賦与すると言われています。 オイルマッサージ:産後11〜12日目以降は、産褥婦と新生児にはオイルマッサージが効果的だといわれています。産褥婦には健康とスタイルの維持、新生児には皮膚の健康と病気の予防、情緒の安定という効果が期待できます。新生児へのオイルマッサージは、成長ホルモンの分泌やオキシトシンの分泌を促し、神経組織の発達が促進されることも報告されています。そのほか、オイルマッサージに関わらず、アイコンタクトも含めて触れ合いながら育てることには大きな意味があります。接触せずに新生児を育てると免疫力が低下し、体格が貧弱になるということは現代医学でも見惚れられています。寒い地方ではゴマ油やピーナッツ油、暑い地方ではココナッツ油やオリーブ油を使ってマッサージを行うと良いでしょう。体が敏感な時期のため、カラシ油などの刺激の強いオイルや、精油・薬用オイルの使用は避けましょう。 ガルシャナ:日本でも昔から、子供の養生法として「乾布摩擦」が行われていました。体毛と反対の方向(手足は胴体に向かって、背中とお腹は水平方向と上下方向)にマッサージすることで、カパの調整に効果的だと言われています。また、虚弱児の喘息や気管支炎など、カパの異常による症状も緩和できるとされています。ちなみに、ヴァータを鎮静化する場合には、毛並と同じ方向にマッサージするのが効果的だと言われています。 食事:カパの増大を抑えるため、シシトウやニガウリなどの苦味の野菜をときどき摂るとよいでしょう。しかし、成長過程にはカパの働きも不可欠なので、自然の甘味も適度に摂るようにしましょう。ただし甘味のものを食べすぎるとピッタやヴァータの乱れが起こり、成長が阻害されたり、癇癪が強くなったりすることもあります。その他、牛乳を素材としたギーには知力を高める作用があると伝えられており、1〜2歳以降はスプーン1〜2杯分を毎日摂ることが推奨されています。また、ゴツコラ(ツボクサ)という薬草を生のままでサラダなどにして摂取すると、記憶力がよくなると言われています。 昼寝:昼間はカパを増大させるため、小児はに効果的です。(大人の場合は、夏のみすすめられています)。寝る子は育つというのは、カパを増加させてくれるせいなのかもしれません。昼寝中には、夜の睡眠時と同じくらいの成長ホルモンが分泌されると言われています。 しつけ(生活習慣を正し、適度な運動をする):インドの諺では、3歳から16歳までは召使のように厳しく育てるという表現を推奨しています。とりわけ早寝早起きの習慣が大切で、そのためには家族の態度も重要だと言われています。しつけのひとつとして、ヨーガなどを実践するのもよいでしょう。ただし、まだ骨のしっかりしていない小児期は、過度な運動や偏った体の使い方に注意してください。ヨーガのポーズで動物や植物のまねなどをすることで、表現力の豊かさも養われることでしょう。
  • アトピー性皮膚炎
     アーユルヴェーダの皮膚病には、アトピー性皮膚炎に相当する病態がいくつかあります。共通する対処法は、糖質(特に小麦食品、乳製品)を避けることです。また、油っぽい食物や肉類、砂糖を使った食品なども、アーマを生成するもとになるので避けた方が良いでしょう。また、野菜などでビタミン・ミナラルを充分に補うことも重要です。特に、抗酸化作用をもつビタミンCやビタミンE、ベータカロチン、ビチオンが必要と言われています。外用薬としては、ターメリックオイルに、皮膚をきれいにする効果があるとされています。瀉血療法や下剤を使う療法といった刺激の強い浄化療法は状態を見極めて行うと良いでしょう。バスティ(浣腸療法)は比較的安全ですので、1歳から可能です。小児期の皮膚炎は成長とともに改善しますので、神経質にならずにゆっくりと治しましょう。子供のアトピーは、治療のプロセスを通して両親も本人も大きな学びを経験します。親の精神状態が、子供に大きく影響するということも学べることでしょう。また、アーユルヴェーダの治療のほか、漢方薬で改善する場合も多くあります。それでも改善しない場合は、ステロイド塗布薬を4週間使い、皮膚のバリアが完全に回復するまで治療するべきだと思われます。その後、薬草療法や食事療法などを継続します。
  • 老いを生きるための知恵
    高齢への考え方を変える:健やかに老いるためには、加齢を忌み嫌う意識を変える必要があります。高齢者は自分のことを「もう年だからだめだ」と思わないようにしましょう。また、死ぬまで人のために役立とうとすることが生活の質(QOL)の向上につながります。高齢者の文化的価値を重視し、社会の中で活躍していただきましょう。アーユルヴェーダにおいて高齢者は、肉体的には衰えていても知恵や経験が豊富で、その民族の文化や伝統をよく知っているため、尊敬して大切にすべきであると教えています。 ヴァータを調整する:増大するヴァータを鎮めるためには、規則的な生活をしましょう。体を冷やさないようにし、ゴマ油で頭や足裏、耳のマッサージを行って養生します。また短時間の昼寝(30分以内)もおすすめです。 ラサーヤナを摂る:強壮法科としてのパンチャカルマ(浄化療法)を受けるほか、強壮長寿薬であるラサーヤナ薬を内服することで、ダートゥ(組織要素)の喪失を防ぐことができると考えられています。インドのラサーヤナ薬には、脳機能を向上させるチャヴァナ・プラーシュやアムリット・カラーシ、骨や関節を強くしインポテンツや尿失禁を改善するアシュヴァガンダ、腎臓・生殖器系の機能改善や前立腺肥大抑制作用があるシラジットなどがあります。また、コンフリー根2、甘草1、ターメリック1、シナモン1/2の割合で金剛すると、骨や関節を強化するラサーヤナ薬になります。老人性の便秘には、温めた牛乳(あるいは豆乳)コップ1杯にトリファラー(アムラ、ビビタキ、ハリタキの3種類のハーブを調合したもの)1gを入れたり、温めた牛乳(あるいは豆乳)にギーを少量溶かしたりして飲むと良いでしょう。アロエ・ヴェラとサフランを少量ずつ牛乳で煎じたものは、女性の若さを保つ作用があると言われています。そのほか、行動のラサーヤナと呼ばれ、倫理的な生活を守るための10項目を守るという方法もあります。【行動のラサーヤナの10項目】 真実を語る 休息と活動のバランスのとれた規則的生活をする 気候や季節に従った生活をする 健全な食事法 貧窮者への施しを励行する 霊的理解を持つ 暴力をふるわない 怒りや過緊張を避ける 酒・性行為をひかえる 他人を傷つけない ヨーガを実践する:ヨーガは、アーチャーラ・ラサーヤナ(倫理的な生活を守ること)に含まれます。ヨーガのアーサナや呼吸法を毎日実践すれば、活力を維持できるでしょう。ただし、高齢のために体が硬くなっていますから無理をしないように。続けることが最も大切です。 【さまざまなラサーヤナ薬(滋養強壮の薬草製剤)】
食事療法(医食同源の原理)

​ アーユルヴェーダでは、心身の健康に対して食事が大きな意味を持っていることを強調しています。『チャラカ・サヒンター』には「正しい食物を摂ることが人間を健康にさせる唯一の方法です。また、正しくない食物を摂ることが病気の原因です」と書かれています。また、インドの諺には「食物が適切でなければ薬はいらない。食物が適切であっても薬はいらない」というものがあります。さらに、『ターイッティリーヤ・ウパニシャット』第二章ブラフマン歓喜品には、「大地に身を託す生類は、いずれをと合わず皆食より生まる。さて、生きる食の力にて、死してはまたも食に帰す。げに食は万物の長者なれば、万能薬と呼ばれることわりなれ。食より万世を食う。ゆえに食はアンナと呼ばれる」とあります。インドでは昔から、健康にとって食事がいかに大切なのかが説かれてきました。

​生活処方箋

 体質や体調を考慮しながら、ディナチャリヤー(アーユルヴェーダ的な1日の生活)を行ってみてください。ドーシャのバランスを整え、オージャスに満ちた生活ができるようになるはずです。

 アーユルヴェーダの生活処方を守るだけで、3ヶ月で8kgも痩せた、肩こりが改善した、胃の不調や高血圧が緩和した・・・・など、さまざま 効果が報告されています。しかし、こうした効果を期待できる一方で、守らなければすぐに病気になってしまうのでは・・・・という心配はいりません。また生活処方箋を守ろうとして今のライフスタイルを急激に変化させるとヴァータを増やすことになります。1〜2週間をかけて徐々に変えるようにしてください。​まずは、自分の体調の異常、つまり現在のドーシャのアンバランス度に相当する生活を行うようにしてみてください。

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