ドーシャを変動させる5つの要因
② 時間と季節
時間(1日)、季節(1年)、人の一生もまた、ドーシャのバランスに影響を及ぼします。この影響には法則があり、カパ→ピッタ→ヴァータの順に増加するというサイクルになっています。
6〜10時がカパ、10時〜14時まではピッタ、14〜18時まではヴァータが増えやすい時間帯です。同じサイクルで夜中からのドーシャバランスも変化し、18時〜22時まではカパ、22時〜2時まではピッタ、2時〜6時まではヴァータの時間帯となります。ちなみに、心の質であるグナも、1日の中で変動があります。8時から16時まではラジャスの時間帯であり、人間だけでなく、動物や植物など全ての生物は、この時間帯に主に活動します。20時から4時まではタマスの時間帯のため、体を休めて眠ります。4〜8時と16〜20時はサットヴァの時間帯なので、瞑想をしたり真言(マントラ)を唱えたりするのに適しています。また、食後に経過した時間によってもドーシャのバランスは変動します。食後1時間はカパ、1〜2時間はピッタ、3時間目以降はヴァータが増加すると言われています。
《季節》
季節においては春にカパ、夏にピッタ、晩秋から冬にかけてヴァータが増えやすくなります。
《人の一生》
30歳までの若年期にはカパ、30〜60歳の成壮年期にはピッタ、60歳以上の老年期にはヴァータが増えやすくなります。
③ 日常生活の暮らし方
宇宙には、グナと呼ばれる20種類の性質があり、ドーシャに影響を与えると考えられています。その際に、「似た性質のものは影響を与え合って増大し合う」という反応が起こります。それはたとえば、ヴァータと似たような性質や構成要素を持ったものがヴァータを増やす・・・・・といった形であらわれます。つまり、ひとたび過多になったドーシャは、ますます増えやすい状況になるちうわけです。
【似たものが似たものを増やす】
重・遅・油・冷性のもの | カパを増大 | タマスの増加と関係 |
熱・鋭・軽・微油性のもの | ピッタを増大 | ラジャスの増加と関係 |
動・軽・冷・速性のもの | ヴァータをを増大 | ラジャスの増大と関係 |
④ 場所および土地
生活する場所の環境条件も、ドーシャに影響を与えます。③と同じく「似た性質のものは影響を与え合って増大し合う」という法則が働くので、たとえば熱帯地方であれば熱などの性質があるため、ピッタが増えます。また、乾燥して寒い場所であればヴァータが増えやすくなります。日本の場合は、四季に応じたバランスの変化(春はカパ、夏はピッタ、秋はピッタとヴァータ、冬はヴァータ)が起こります。
⑤ 天体の運行
大宇宙と小宇宙は、フラクタル構造(一部を拡大すると、全体と相似する形を見つけられるような構造)になっています。そのため、大宇宙である天体は、小宇宙である人体のドーシャのバランスを決める要因のひとつだと考えられています。
【天体とドーシャのバランスの関係】
天体 | 増大させる | 減少させる |
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太陽 | ピッタ・ラジャス | タマス・カパ |
月 | カパ・タマス | ピッタ・ラジャス |
火星 | ピッタ | |
水星 | カパ | |
木星 | ヴァータ | |
金星 | カパ | |
土星 | ヴァータ |
たとえば、火のエネルギーを持つ太陽は、同じ性質を持つピッタを増加させるため、昼間の体内ではピッタやラジャスが増加します。季節性感情障害などの鬱状態(タマスの増加状態)が、日照のよい南の島に行くと治ることがあるのは、タマスのバランスがとれるためでしょう。また、月は水のエネルギーを持っているため、カパとタマスを増やす一方、ピッタやラジャスを減少させます。月齢によって水分代謝や精神状態が変化するのは、その影響だと言われています。痔瘻の手術で使われることもあるスヌヒーという薬草やヘチマ水は、アーユルヴェーダでは満月の日に採取されます。それは、カパの性質が増える満月のとき、多く採取できるからです。そのほか、満月は出産が多くなる、満月と新月は精神異常や犯罪が多くなる、などの現象も、天体とドーシャの影響によるものだといわれています。