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​生活処方箋

朝の過ごし方

​ アーユルヴェーダでは、日の出前96分から日の出までの間(冬は午前6時前後、夏は午前5時前後)に目覚めることをすすめています。朝の目覚めとともに、今の状態を観察してみてください。ぐっすりと眠れたのか、さわやかに起床できたのか。ベッドの中で今の状態を観察してみてください。体のどこかが痛む場合は、ヴァータの乱れが考えられます。全身が重くて硬いところがあるなら、カパの乱れやアーマの蓄積が疑われます。カパが増悪することでヴァータを閉塞している場合には、硬い上に痛みもあるでしょう。寝起きをよくするためには、体を動かすとよいでしょう。また、カパを減らす軽快な音楽を聴いたり、ローズマリーやユーカリなどの香りを焚くのも良いでしょう。

​脈を診てその日の体調を知る】

 アーユルヴェーダではもともと、現代医学と同じように、医師に脈診を委ねることを基本としていました。しかし、今後は、医師に任せきりの治療システムでは、患者の人間的な成長を阻害すると思われます。セルフ脈診によって、毎日の自身の状態に気づくようにしてください。特に、早朝の空腹時の脈はその人の健康状態を示すと言われています。自分の体のリズムに触れて気付きを高めるために自己脈診をしてみてください。

【部屋と体を換気する】

​​ まず、窓を開け、朝のすがすがしい空気で部屋を満たします。そして、再び大きな深呼吸をしてみてください。夜中のうちに溜まった毒素を吐き出すようなイメージで息を吐いた後、お腹・胸・肩へと空気を入れるように息を吸います。両腕を大きく広げ、太陽のエネルギーを吸うような気持ちで息を吸って、肩・胸・お腹の順で息を吐き出してみてください。

【舌苔をとる】

​ アーユルヴェーダでは睡眠中に、皮膚や口腔内に体内の老廃物やアーマが出ると言われています。起床時に、口や舌の掃除や沐浴が必要なのはそのためです。現代医学においても、舌苔にはアルデヒドという発癌物質が蓄積していることが明らかになっています。舌苔を除去することで、アルデヒドも減少すると推定されます。

【舌の浄化】​​​

​ まずは自分の舌を観察してみてください。舌苔がついていないでしょうか。舌苔は、舌の表面の細胞や白血球などの垢、細菌の代謝産物、食物のカス、発癌物質のアルデヒドなどが混ざってできたアーマです。起きた時に舌苔があたり、口の中が粘ったりしているのは、アーマが出ているためです。

  • ヴァータとアーマが合わさる → 黒い苔(サーマ・ヴァータ)

  • ピッタとアーマが合わさる → 黄色い苔(サーマ・ピッタ)

  • ​カパとアーマが合わさる → 白い苔(サーマ・カパ)

​ 健康のためには、舌の汚れを起床後に除去し、口内を清潔に保つことが大切です。舌苔のケアには、市販されている金製か銀製のタングスクリパー(舌かき)を使うほか、スプーンで代用することもできます。歯ブラシでこすると、毒素を押し込み逆効果になる可能性もあるのでNGです。また、強くこすぎすぎると味覚が低下する例もありますので、優しく労わるようにケアしてください。口臭や口腔内のトラブルを防ぐ効果も期待できます。舌苔の多さは、アーマの多さを示しています。体調が良くなったり、胃の調子が良くなったりすると、苔の量は減少します。

【ゴマ油によるうがい】

 ​歯磨きと舌の浄化がすめば、一度加熱したゴマサラダ油によるうがいか、ゴマサラダ油による歯茎のマッサージをします。ゴマ油には種々の抗酸化作用成分が含まれており、抗菌活性についても報告されています。ゴマ油により口の中の雑菌が少くなくなるうえ、歯茎をマッサージすることで血流が促され、歯槽膿漏予防にもなります。近年の研究により、歯槽膿漏菌が全身に入り込むと動脈硬化が促進されることが明らかになってきました。そのことからも、ゴマ油による歯茎のマッサージは意義があると考えられます。

【白湯を飲む】

 舌苔のケアを行なって口腔内がきれになったら、お湯を1杯飲みます。寝起きに飲む白湯は、排泄を促し、消化の力を高めます。白湯の温度は、ドーシャのバランスやアーマの浄化力に影響します。そのときに美味しく感じられる温度(湯冷ましから50℃程度まで)を、体調を考慮して摂ります。

【排尿と排便】

​朝には排尿と排便を行うのが理想的ですが、体のリズムには個人差があるので、毎朝でなくても不健康とは限りません。排尿や排便を我慢しないでください。アーユルヴェーダでは、生理欲求を我慢することがヴァータを増やす大きな要因だと言われています。

【鼻洗浄と点鼻】

 鼻詰まりや鼻汁があれば、カパが増大しているのかもしれません。特に春の朝は、カパが増大しがちで花粉症になりやすいと考えられています。花粉症は、カパの増悪による典型的な症状です。また、アーユルヴェーダでは、鼻は脳の扉だと考えられています。鼻が詰まっていると頭の働きが鈍くなるのはそのためです。そんな時は、増大したカパを調整するためにもジャラ・ネーティー(鼻洗浄)をします。​人によっては、ジャラ・ネーティーを毎日行うとヴァータを乱す場合もあります。しかし、プラティマルジャ・ナスヤ(2滴程度の点鼻)であれば、ヴァータを乱す心配はありません。

【アビヤンガとガルシャナを行う】

 1日のはじまりにアビヤンガを行うことにより、消化力を高め、皮膚や子宮を浄化します。冷え性の人や、体が重くだるい人、むくみがある人、汗をかきにくい人などは、アビヤンガの前に、絹の手袋や活痧プレート(活痧マッサージをする板)を使ってガルシャナを行うと効果が高まります。​

【皮膚の浄化、洗髪】

 アビヤンガの後は、入浴かシャワーでオイルと汗を流してください。インドでは、沐浴としてシャワーを浴びることが多いようですが、日本人であれば湯舟に入ってリラックスするのも良いでしょう。朝の沐浴は、夜中のうちに皮膚にできたアーマを浄化する効果があります。それに対して夜間には、沐浴などによって頭を冷やすと翌日に頭部のカパが乱れると考えられています。夜に洗髪すると、翌朝の鼻の調子が悪くなる事があるのはそのためです。鼻が悪い人やカパが乱れやすい人は、特に夜ではなく朝に洗髪するのがおすすめです。やむを得ず夜に洗髪をした時は、素早く十分に乾かしてください。​

【調身(太陽礼拝とその他のアーサナ)】

 沐浴後は、体をほぐします。入浴によっていくぶん体が柔らかくなっているので、アーサナ(ヨーガのポーズ)を行うには最適です。アーサナには、体という楽器を調律するような効果があります。運動のように筋肉を強めるだけでなく、内臓器官を活性化するのです。特に瞑想のための座法(蓮華座、金剛座など)は、精神を強固にして暑さや寒さ、空腹、乾きなどに耐える力を強めます。

 太陽礼拝は本来、太陽の昇る東に向かって行います。全ての人と物に惜しみなく愛を注ぎ、見返りを求めない太陽の姿に、感謝の気持ちを持って挨拶するためのものです。そして、自分自身もまた、太陽のようなエネルギーを持ち合わせているということに目覚め、限りない愛の波動を注げるようにと祈るものです。太陽礼拝によって脊柱を屈曲させたり背屈させたりすることは、椎骨静脈叢の流れを促す作用があると思われます。椎骨静脈叢は脊柱を菅の内外にあり、仙骨部から頸部、さらには脳内の静脈洞にまで存在します。しかし、弁が極めて少ないため鬱滞しやすく、それによって脳脊髄液の流れも鬱滞させてしまうことがあります。太陽礼拝で椎骨静脈叢や脳脊髄液の流れがよくなると、中枢神経にも大きく関与することが考えられます。ヨーガの特徴は、体を動かすポーズに続いてリラックスポーズがあることです。リラックスポーズによって、体のすみずみにまで血液が届けられ、快適な状態を味わうことができます。

【調息(心身の状態に合わせた呼吸)】

 正座かあぐら、または結跏趺坐(座禅の時の座り方)をします。そして以下の呼吸法(調気法)によって、息を整えます。

【調心(瞑想とマントラ=マインドフルネス)】

 調息の後は、瞑想や気功(静功)を行います。近年、「マインドフルネス」と呼ばれる心理的療法が世界的に普及してきました。これは、無判断ですべてを受けいるれることで、心の静寂を体験する方法です。自分の呼吸に意識を向けて、無心になる瞑想法を1日3分ずつでもいいので実践してみてください。アーユルヴェーダでは、心を整える時にマントラを唱えることをすすめています。マントラとはマン(心)のトラ(道具)という意味で、心の奥深い体験をするための道具です。心の中でマントラを唱えると、マントラとマントラの間のギャップでは、マントラさえもない無心・静寂の状態(≒マインドフルネス)になります。重要なのはマントラではなく、マントラとマントラの間にあるギャップを体験することです。マントラは、声を出して唱えても心の中で繰り返しても良いですが、一般的には心の中で繰り返す方法がより効果が高いと言われています。

【朝食前に速足で散歩】

 運動に適当な時間帯は、朝食前です。夕食によって高まったカパは、睡眠中は充分に活用されず身体組織内に蓄積されています。蓄積されたカパによって重さが生じるために、朝の気だるさが出ます。カパを適度に消費するには、運動が最適です。運動の方法としては、全身をバンラスよく動かすのが理想的です。しっかりと手を振り足を動かして散歩するのがおすすめです。目安としては1日8000歩を歩き、そのうち約20分間を速足にすると良いと言われています。

 現代医学の研究によれば、運動中の心臓死が最も多いのは朝だと言われています。原因として考えられるのは、カパが増大して血液が重くなり動きにくくなっているため、心臓に負担が強くなってヴァータが乱れ、血管の閉塞などが起こるためです。ですから、朝から大きな負担をかけないようにするため、ジョギングなど負荷のかかるものではなく、散歩程度の軽い運動にするのが良いでしょう。また、春と冬(初冬、厳冬)は、朝と夕に軽度から中度の運動をするのがおすすめです。運動量の目安は、体力の半分程度です。ハーハーと息が弾んできた時、口に渇きを覚えた時、額・鼻・膝下・背中に汗がうっすら出てきた時の状況を目安にしてください。アーユルヴェーダでは、現代医学がすすめるのと同じく、最大酸素摂取量の60%程度の運動が適度であると考えています。心拍数は、安静時心拍数/分と最大心拍数(220マイナス年齢)の中間までの運動がよいとされています。また、体質によってそれぞれ適した運動に違いがありますが、毎朝でも実践しやすい運動としては、ゆっくり歩行と速足を交互に行う散歩が一番おすすめです。

  • ヴァータ体質 → ダンスやサイクリング、散歩

  • ピッタ体質 → スキー登山、水泳

  • カパ体質 → ランニング、ウエイトトレーニグ

【ショウガで食欲を高めてから朝食を】

 朝の散歩の後は朝食をとりましょう。食前には、自分のお腹の状態を感じてください。健康的に食事を摂るためには、食事前に短時間の静寂を楽しむことが効果的です。また、食前の祈りもいいでしょう。不自由せずに食事を摂れること、食事を作ってくれた人や食物を育ててくれた人、自然への感謝を込めて、「いただきます」などの言葉を口にします。

 食事の際にはまず、アグニを高めるためにショウガのスライスを2、3枚に、塩とレモン汁とハチミツ大さじ1杯を混ぜ、レモンやライムの搾り汁、コショウ、クミンなどをかけて飲みます。時間があれば、ショウガ湯を作って飲むと良いでしょう。これらによってアグニが燃え立ち、食欲が沸き起こってくるはずです。

 カパの増大が強い時は、レモンやライムは少なめにして、ショウガとハチミツを混ぜます。ヴァータが増大気味の時は、ハチミツを多めにしてレモンを加えます。ショウガが入っている処方をとると、さらにピッタが乱れて鼻血が出たり、胃の調子が悪くなったりする人もいます。その場合は、ライムを多く加えるか、コリアンダーやクミン、フェンネルなどの粉を少量のお湯に入れて飲んでも良いでしょう。

 このようにアグニを高める処方をとっても食欲が起こらない時は、食事を抜くのが良いでしょう。特にカパの人は、朝の白湯のみで過ごすこともおすすめです。ヴァータやピッタの人は、食事をぬくとふらふらしたり、怒りっぽくなることがあります。食欲がない時は、温かい牛乳または豆乳180mlに、ドライジンジャーとターメリックを小さじ1/4加えて飲むと良いでしょう。

 食欲が十分にある人の場合は、温かい和食(ご飯、味噌汁、魚、種々の海藻、少量の果物など)を1口30回以上噛んで消化を促すことをおすすめします。

 日本ではパン食も普及していますが、21世紀に入って遺伝子組み換えの小麦などが増えたため、小麦に含まれるグルテンが消化しにくくなっています。そのため、アーマが発生したり腸内細菌叢が乱れたりして、アレルギー反応が惹起されるとして問題視されています。また、牛乳も食物アレルギーの要因として知られているため、小麦や牛乳をあまり使わない和食を選ぶことがよいと考えられます。このことは、日本人の寿命が世界的にも誇れる状況であることからも言えるでしょう。

​【朝のヨーガでやる気をだす】

 仕事などを始める前から疲労感がある人は、朝食によってカパが増大しすぎていたり、睡眠時間が不足してヴァータ乱れていたりすることが考えられます。

​ そんな時はヨーガを行いましょう。また、ヨーガに加えて三段式呼吸を行うのもおすすめです。このような呼吸を2〜3回繰り返してみてください。ゆっくりと吐く事でリラックスでき、疲労感が緩和できるでしょう。

昼の過ごし方

 朝や夜に比べて昼は、消化の火が強くなる時間帯です。日本では夕食の量を多くしがちですが、夕食よりも昼食の量を多くした方が消化に良いでしょう。(ただし昼食を摂り過ぎると午後に眠くなり、未消化物であるアーマを生むことになるので要注意です。)

 昼食の時間がきたからといって、習慣的に食事をするのではなく、まずは自分の身体に聞いてみてください。いま、お腹が空いているでしょうか?お腹が空いていないのであれば、アーマの蓄積があるか、ドーシャのアンバランスによってアグニが乱れていると考えられます。そんな時は、軽くて消化のよい昼食にしたり、白湯やスープなどで済ませるのも良いでしょう。

​ 一般的には太陽と同じで、昼間のアグニは1日のうちで最も高くなります。ただ、それに乗じて食べすぎないように注意してください。場合によっては、昼食を抜き、遅めの朝食と早めの夕食の2食を習慣にするのも良いでしょう。

【午後の活動の前にリラックス】

 食後は、すぐに仕事や運動などをするのではなく、体内で消化が進んでいる感覚を見届けてからにしましょう。満足感や幸福感、体の軽さがあるでしょうか。満腹で体が重くなるまで食べると、アーマを溜めるもとになりますので、控えめにした方がよいでしょう。

 食後にコーヒーを飲むと消化を阻害すると言われていますので、ハーブティーの方がおすすめです。昼間はピッタが増えやすくなりますので、ピッタのバランスを整えるコリアンダーやシナモンのティーがいいでしょう。ただしカパ体質の場合は、アメリカンなどを1日に3杯程度までであればおすすめできます。

 仕事などにとりかかる前には、椅子に座って自分の体を観察してみてください。一度伸びをします。両手を後頭部で合わせて左右の脇を反らし、大きく吸いながら胸を張ります。その後、息を吐きながら背中を丸めましょう。両手を下ろしてもとの姿勢に戻り、三段式呼吸を行いましょう。2〜3回繰り返してみてください。

 その他、昼間の仕事の能率を高めるためには、座ったままで15分間程度仮眠するとよいとも言われています。完全に横になるとカパを増やしてだるさを悪化させますが、椅子に座ってうとうとすることで、脳の疲労が取れることも知られています。仮眠をとっていた高校生は成績が上昇したという報告もあります。

 企業によっては、室内を暗くして横臥の昼寝をするところもあると言いますが、アーユルヴェーダでは、半坐位(リクライニングシートに横たわった姿勢)で瞑想姿勢がよいと思われます。もしくは、椅子に座って机にうつ伏せる姿勢でも構いません。

【昼食と間食の取り方】

 15時頃になるとヴァータが増大するため、休息と甘いものが欲しくなります。しかし、昼寝も間食も、アーユルヴェーダでは推奨していません。

 まずは、昼寝はカパを増加させると言われています。そのため、糖尿病や皮膚病、頭痛などの原因になると考えられ、アーユルヴェーダでは禁じています。ただし、椅子に座った状態での仮眠であれば、前述のようにカパを増加させることがなく、むしろ疲労がとれるのでおすすめです。

 また、例外的に、猛暑の時などには積極的に昼寝をすすめています。そのほか、老人や女性、小児、虚弱者、長期旅行の後の人、怪我をしている人には昼寝がおすすめです。これは、ヴァータの増大によって体力が低下している時には、横臥や半坐位の昼寝によって疲労を回復できるからです。

 そして日中は、甘いものを食べたくなっても、基本的には控えた方がよいでしょう。アグニの負担となり、カパが増大するためです。間食をしたくなったらまず目を閉じて自分の身体に尋ねてみてください。それでも欲しい場合は、例えばイモなどの自然食にするのが良いでしょう。砂糖を摂取するとヴァータは鎮静化しますが、カパが増大し過ぎる危険性があるからです。イモを丸ごと食べたり、甘草などの甘いハーブティーや白湯を飲んだりすると、甘味や温かさによってヴァータが適度に鎮められます。甘いものの代わりに塩味のものを摂れば、ヴァータが静まることもあります。

【ヨーガで気分一新、心と体を活性化】

 肩こりや目の疲労が気になる時、リフレッシュしたい気分の時には、ヨーガをすると良いでしょう。座ったままで気軽にできるヨーガもあります。

​【調息と調心】

 身体を調えた後は、息を調えます。ゆっくりと目を閉じ、息を吐き出したら三段式呼吸をしてみます。その後はさらに心を調えます。楽な姿勢で座り直し、両手はももの上に置いて手のひらを上向きにします。親指と人差し指で輪を作っても良いでしょう。親指は大宇宙、人差し指は小宇宙である自分自身を示しています。瞑想することは、それらの間にプラグを差し込むことになります。その状態で自分の呼吸の出入りをしばらく眺めたら、続いて調心法(瞑想)を行います。具体的には、

  1. 集中瞑想

  2. ボディスキャニング

  3. 観察瞑想​(アナパーナサティ)

​などを行います。こうした瞑想は、それぞれ20分間ほど行うのが理想的ですが、難しい時は短時間でもよいので行なってみてください。集中瞑想は、マントラ瞑想を行ってください。無判断、無邪気、無拘束でひとつのキーワードに集中します。ボディスキャニングでは、自身の体の一箇所一箇所に順々に意識を持っていきます。その部分を意識しながら、痛み感覚をただ眺めることを行います。観察瞑想では、目を閉じて周囲の環境などをイメージし、無判断の状態で観察します。いずれも、無判断の状態であるがままを受け入れことが大切だと言われています。

​ 瞑想の後は、両手で拳を作ってぎゅーっと伸びをしてから目を開けます。瞑想によってだるさが出てしまった人は、ブレス・オブ・ファイヤーを2〜3分間行うと良いでしょう。

​夕方の過ごし方

​【三段式呼吸と入浴】

​ まずは、1日の活動で溜まった心身の疲れや老廃物を取り除くようなイメージで、息を吐き出します。三段式呼吸を行うと良いでしょう。帰宅後は、入浴かシャワーで体の汚れをキレイにします。寝る前でも構いませんが、夕食前の方が良いでしょう。

​【入浴後のヨーガ】

 入浴後には少し体を冷まして、調身・調息を行います。床でゆったりと体を伸ばし、ヨーガのアーサナなどを行なってください。激しい動きやポーズは、ヴァータを乱すので控えましょう。瞑想は、朝よりも長めに行うと良いでしょう。ヨーガには「つなぐ」という意味があります。一人で行ってもいいのですが、家族あるいはパートナーといっしょうに行いながら、くつろぎの時間をすごすと良いでしょう。体が硬い人は相手に手伝ってもらえば、よりしっかりとストレッチ効果が得られるでしょう。

【早い時間帯に少量の夕食を】

 夕食時にはアグニが弱っているようであれば、ショウガの処方が最適です。生のショウガをスライスして食べるほか、ゆがいたショウガをスライスして食べるのも、体が冷えている人には良いでしょう。ショウガは、加熱することでショーガオールという循環促進成分が増加するためです。ヴァータとカパが乱れている人は、食前酒として梅酒や赤ワインを少量とれば、アグニを高められるでしょう。日本の習慣では、遅い時間に夕食をたくさん食べることが多いですが、アーユルヴェーダでは日没の3時間以内(18時〜21時)に軽めの食事をとることをすすめています。アグニが弱くなる夕方以降は、日中のような活動よりむしろ、休息に向かう時間体のためアーマ(未消化物)を作りやすいのです。夕食では、油分の多い揚げ物やヨーグルトなどは避けてください。そうすれば、翌朝の体の軽さを実感できることでしょう。食養生のうち、もっとも効果が高くて簡単なのは、夕食を軽くすることです。肥満や糖尿病の場合は特に、主食を控えておかずだけを摂取するよう指導することもあります。1日1食主義で夕食をたっぷり食べる場合もありますが、摂食回数が少ないとかえって肥満になったりすることも知られているので注意が必要です。

【夕食後の散歩】

 夕食後1時間ほどし経てば、15分程度の散歩をすると良いでしょう。これは、アグニを活性化させて、就寝までに消化を完了させることを目的としています。貝原益軒は『養生訓』のなかで、夕食後に百歩歩くことをすすめています。食事の後、特に20時以降は、熱めの白湯かハーブティーが良いでしょう。夜間にはアグニが低下しています。食べずに過ごせば、未消化物の生成を減らすことができます。おなかが空きすぎて眠れない場合は、ヴァータやピッタが増大していることが考えられます。コップ2/3程度の温かい牛乳にショウガを少々入れ、ギーを小さじ1杯弱加えて飲むと良いでしょう。牛乳の代わりに豆乳を使い、ギーやシナモン、ウコンなどを加えて飲んでも良いでしょう。夕食後に入浴する場合は、2時間以上経ってからにしましょう。これは、入浴によって手足などの末端部分への血流が促進され、肝臓や胃腸など消化器官の働きが弱くなるのを防ぐためです。

【性生活】

 性本能は人間の生理的な欲求です。性生活によって心身の疲れが回復することもあるでしょう。『チャラカ・サンヒター』は13種類の自然の生理欲求をあげており、その一つに射精があります。欲求を抑制すると、ヴァータが乱れると教えています。また、「ルールに従った性生活を楽しむ人は、いつまでも若く長寿を楽しむ」とも書かれています。喜びをもたらすだけではなく、適度に行うことで筋肉の強さを増進させ、皮膚に艶が出ると言われています。性行為を行う時間帯は、夜明けや真昼、夕暮れ時、真夜中など、ヴァータとピッタが増大している時を避けましょう。また、行為後に十分な休息が取れない時間帯も、避けた方が良いでしょう。頻度の目安は、日本の四季において秋と春は4日に1度、夏と雨季は15日に1度、冬は満足いくまで、とされています。行為後に消耗感があるようなら、次回のタイミングを遅らせたほうがよいでしょう。ヴァータとピッタの人は少なめ、カパの人は多めでも良いと岩rています。体を清潔にし、空腹や口の渇きがない状態で正常位で行うのが良いとされています。香りを使うこともすすめられています。

  • ヴァータ:カモミール、ラベンダー、ローズマリーなど。

  • ピッタ:ローズ、ゼラニウム、ベルガモット、イランイランなど。

  • カパ:ユーカリやティートリー、レモングラスなど。

​【1日を振り返り、眠りにつく】

 ベットに入る前に、できれば正座やあぐらなどの楽な姿勢になって目を閉じ、三段式呼吸を行うとよいでしょう。できるだけゆっくり、できるだけ吐く息を長くしながら4〜5回繰り返します。その後で、自身の呼吸の様子を眺めながら、1日の反省します。1日のうちに抱いた否定的な思いを捨て去り、その思いを無判断で眺めましょう。いろいろと詮索を始めると眠りを浅くする可能性もあるので、できるだけ無判断でいるようにします。すべての出来事は必然性があって起こっているものです。無駄なことも間違ったこともないのだということを理解しましょう。一般的には早めに眠ることが推奨されていますが、カパ体質あるいはカパ性疾患のある人、肥満の人、油分や脂肪分に富む食事をした人は、夜更かしをしても良いとされています。もしも頭が冴えて眠れないなら、ヴァータやピッタが乱れていることが考えられます。アーユルヴェーダの古典『スシュルタ・サンヒター』では、不眠の治療として、

  1. 入浴すること

  2. 性行為をすること

  3. 頭・顔・額にクリームなどを塗ること

  4. オイルマッサージをすること

  5. 好みの香水や音楽を楽しむこと

  6. 指圧を受けること

​​をすすめています。サシェ(香り袋)や欲剤、香水を使うのも良いでしょう。精油を滴下した布などを枕元に置くのも効果的です。オイルマッサージもすすめられていますが、その後に洗髪をしたら髪をよいう乾かすようにしてください。濡れたままにしていると、カパを増やす傾向があります。もしくは、オイルを使わないヘッドケア(チャンピサージ)や、足を使った足踏みマッサージ(ステッピングマッサージ)などもおすすめです。

​健康を左右する五感の使い方

【五感と病気の関係性】

 アーユルヴェーダでは、五感の使い方が健康状態を左右すると考えています。『チャラカ・サンヒター』には、「五感とその対象との接触の誤り(過剰・過小・過誤)が病気を引き起こす」とあります。例えば、大音量の音楽をヘッドフォンで聴き続けることによって、聴覚と音との接触が過剰になれば、騒音性難聴などの病気を引き起こすことがあります。そのほか、無音の環境で会話などをすることなく過ごせば、聴覚の過小になりますし、不吉な話を聞くことなどは間違った五感の使い方である過誤になります。こうした誤りは、体や心のドーシャの乱れを引き起こすため、病気の原因になると言われています。五感はあくまでも、適切な方法で適度に使うことが大切です。

 知覚器官(五感)は、その対象を通じて外界から5元素を摂取する入口です。『シヴァ・サンヒター』には、「虚空から風が出現し、風から火、火から水が出現し、水から地が出現した。虚空は声の属性とし、風は運動と触を、火は形相を、水は味を、大地は香りを属性とする」とあります。聴覚には「空」、視覚は「火」、嗅覚は「地」、味覚は「水」、触覚は「風」の元素を摂取します。

 正しい量と質の元素を五感から摂取するとき、消化、・吸収がうまく行われるため、体内はもちろん、意識のレベルにおいても栄養となります。しかし、これらを間違えるときに病気を引き起こします。元素を摂取するかどうかは、自分自身で決めるかどうかは、自分自身で決めることができます。感覚器官による摂取をコントロールすることで、病気の原因を取り除くことができます。コントロールの基準となるのは、自分自身の「快」「不快」の感覚です。マニュアルを盲信して従うのではなく、自分の五感がどのように捉えているのかを頼りにしてください。私たちは、「先生に言われたから」「本に書かれていたから」などと、自分の体感を無視して五感を使ってしまうことがあります。勉強熱心な人ほど、そのように頭だけで理解をして実行してしまう傾向があります。もっと、自分自身の感覚を重視しましょう。まずは、生活の中で、「見る、聞く、嗅ぐ、触る、味わう」という活動を大切にしてみます。そして五感に耳を傾けるうち、誤った使い方(過剰・過小・過誤)に気づくようになります。自分の感性を信頼して誤りに気づき、「快」の感覚に従って行動すれば、自然と調整作用が働いて健康を保てるようになります。

【五感を研ぎ澄ますために】

【視覚】

【聴覚】

【嗅覚】

  • ヴァータを鎮める香り

  • ピッタを鎮める香り

  • ​カパを鎮める香り

【味覚】

​【触覚】

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