パンチャカルマの流れ
Step 0 :
アーマ・パンチャナは、アグニ(消化の火)を高めて胃腸の働きを順調にするというものです。パンチャカルマの前処置(プールヴァカルマ)の前段階で行います。アーマ(未消化物)は、パーチャナ(熟成)させて消化しきってからでなければ、排出できないとされています。パンチャカルマは、アーマ(未消化物)を直ちに排出させるものととらえられがちですが、アーマが蓄積している場合、パンチャカルマは禁忌だとされています。
未成熟な青い果実からはジュースが絞れないのと同様に、熟成されない未消化物がのこったままでは効果的な浄化ができません。そればかりか、新たな病気を作ったり治療による反動がおきたりする原因にもなります(なかには、好転反応として起こる症状もあります)。朝起きたときに体がだるい、硬いなどの症状がある人や、打撲したわけではないのにかかとや関節が痛むなどの人は、アーマが蓄積している可能性があります。これらの症状は、アーマ・パンチャナだけで治療することも多いです。また、急性症状によって発熱がある人もアーマが蓄積していると考えられます。パンチャカルマを行う前に、アーマ・パンチャナを行います。以下の1.〜4.のアーマ・パンチャナを2日間続けることを、毎月もしくは毎週繰り返すだけで、軽い体調不良が改善することもあります。ただし、1.〜4.のすべてを行えない場合でも、できるものから始めることをおすすめします。
《アーマ・パンチャナの方法》
Step 2 :
中心処置
パンチャカルマでは5つの方法(浣腸法、寫下法、瀉血法、経鼻法、催吐法)を使い分けることによって、過剰なドーシャを排出します。
大腸から肛門を通じて過剰なヴァータを排出します。バスティには2種類あります。
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アヌヴァーサナ・バスティ(A):ゴマ油と少量の岩塩からなる液を20〜60ml程度浣腸する
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ニルーハ・バスティ(N):薬草の煎液・蜂蜜・岩塩・ゴマ油・薬草の粉などを300〜900mlほど浣腸する
小腸から過剰なピッタを排出します。ピッタを鎮めるオイル(ココナッツオイル、オリーブオイル、薬用ゴマ油など)を使ってアビヤンガやシローダーラーを行なったり、ピッタが乱れた人は目が疲れていることが多いので、ネートラ・タルパナ(目にギーを入れるケア方法)を行います。
汚濁した血液やアーマを皮膚から排泄させます。ラクタ・モークシャナもまた、専門家のもとで行うべき処置ですが、自身で吸角や医療用ヒルを使って行うことも可能で、比較的安全性も高いと言えるでしょう。これは、韓国でブハンと呼ばれて、一般に行われている方法に類似しています。
ちなみに月経中は、ヴィレーチャナやラクタ・モークシャ、ナスヤなどは行いません。また適応と禁忌を守らないと副作用が出現することがあるので、注意しましょう。パンチャカルマを行なっている間は体内でアーマが動くため、体のだるさや痛み、心理的な変化などが起こることがあります。このような反応は通常、数日で消失して以前よりも体調がよくなります。もし長期的な症状が続くようであれば、副作用も考えられますので、対処が必要です。例えば、発疹などは、ゴマ油が体に合わないことによってピッタが増えた副作用だとも考えられますから、ピッタを鎮静化するオイル(薬用ギーやココナッツオイル、チャンダナディタイラなど)に変更するなどの対処をするとよいでしょう。
Step 3:
後処置
解毒効果の高い中心処置は、体に負担がかかります。そのため、前処置と中心処置を同じ日に続けて行なったら、その後、数日間は心身を安静にし、軽くて消 化しやすい食事をとるようにします。治療最終日以後も、中心処置にかかった2倍程度の時間をかけて食事の量や質、日課などをもとに戻します。治療中は、服用している西洋医学の薬は中止する必要はありませんが、ハーブ製剤を使用している場合は中断し、数日してから再開します。
家庭でできるパンチャカルマ
このようなパンチャカルマは、1年に3回、季節の変わり目には、滞在型施設などで集中的にうけるとよいと言われています。しかし、時間を捻出することが難しい場合などは、家庭で行える範囲で実践してみるとよいでしょう。特に、ヴィレーチャナ(寫下法)やスネーハパーナ(油剤飲用法)などは家庭でも行いやすい療法です。
そのほか、家庭でできるものには、アビヤンガ、ガルシャナ、ゴマ油を使ったナスヤ、ゴマ油を使ったうがい、ゴマ油を使った歯肉マッサージ、ネトラ・タルパナ(目にギーを入れる)などがありますが、これらは浄化効果よりも、体と心のドーシャを鎮静化させる効果が大きいと言えます。そのほかに直接的な浄化療法として、塩湯による鼻洗浄、塩とターメリックによるうがいなどがあります。いずれも安全で簡単にできます。